Evil Revenger 復讐の女魔導士 ─兄妹はすれ違い、憎み合い、やがて殺し合う─
「ふん……、貴様等が、どれほどの役に立つか分かったものではないが……まあ、いいだろう」
大隊長は、戦況を説明し始めた。
大隊長が話した戦況からわかったことは、魔王軍が日々じりじりと、ベスフル軍に押され始めているということだった。
最初は数で圧倒していたはずの魔王軍も、大隊長の口ぶりから、今となっては戦力差で勝っているか怪しいように思えた。
「あの男、ヴィレント・クローティスを止めない限り、我々に勝利は難しい」
それが、彼らが苦い表情で出した結論だった。
こちらの主力と敵の主力が戦っているところで、側面、あるいは背後から、兄が率いる少数部隊が奇襲をかけてくるというのが、ベスフル軍の戦い方だという。
兄は魔の谷の時と同じような、少数の部隊を率いて攻めることを得意としているようだった。
魔王軍は、初戦で辛酸をなめることにはなったが、その時は、特に大きな焦りはなかったのだという。
わかっていれば、どうとでもなる。
兄ヴィレントの予想外の強さに驚きこそしたものの、所詮1人の人間。
率いているのも、100人に満たない小数部隊だ。
そう思い、余裕を持って迎えた、2度目、3度目の戦い。
彼らは初戦以上の苦汁を、味わうことになった。
2度目、兄の部隊の出現を的確に読み、その3倍近い部隊を差し向けて取り囲んだ。
倒せずともよい、主力同士の戦いの間、奴らを足止めできるだけでも充分だと睨んでいた。
だが、3倍の兵力を持つその部隊は、あっさりと突破を許してしまった。
敵にしてみれば、別に向かってくる相手全てを倒す必要はない。
突破できる場所を見つけて駆け抜け、こちらの主力の隊列をかき乱すことができれば、兄の役目は果たされている、ということのようだった。
そして、3度目、こちらの軍は重装兵部隊を差し向けた。
倒すことは考えなくてもよい。
重い甲冑を着込んで大盾を構えたその部隊は、簡単に倒れることはなく、歩兵主体の兄の部隊を確実に足止めするはずだった。
しかし、兄は重装兵部隊を確認すると、それを無視し、あっさりと迂回して主力に襲い掛かったのだという。
機動力で劣る鈍重な重装兵達は、それを食い止められなかった。
数で勝る敵を蹴散らす突破力と少人数の軽装歩兵による機動力を併せ持つ、それが兄の率いる部隊だった。
大隊長は、戦況を説明し始めた。
大隊長が話した戦況からわかったことは、魔王軍が日々じりじりと、ベスフル軍に押され始めているということだった。
最初は数で圧倒していたはずの魔王軍も、大隊長の口ぶりから、今となっては戦力差で勝っているか怪しいように思えた。
「あの男、ヴィレント・クローティスを止めない限り、我々に勝利は難しい」
それが、彼らが苦い表情で出した結論だった。
こちらの主力と敵の主力が戦っているところで、側面、あるいは背後から、兄が率いる少数部隊が奇襲をかけてくるというのが、ベスフル軍の戦い方だという。
兄は魔の谷の時と同じような、少数の部隊を率いて攻めることを得意としているようだった。
魔王軍は、初戦で辛酸をなめることにはなったが、その時は、特に大きな焦りはなかったのだという。
わかっていれば、どうとでもなる。
兄ヴィレントの予想外の強さに驚きこそしたものの、所詮1人の人間。
率いているのも、100人に満たない小数部隊だ。
そう思い、余裕を持って迎えた、2度目、3度目の戦い。
彼らは初戦以上の苦汁を、味わうことになった。
2度目、兄の部隊の出現を的確に読み、その3倍近い部隊を差し向けて取り囲んだ。
倒せずともよい、主力同士の戦いの間、奴らを足止めできるだけでも充分だと睨んでいた。
だが、3倍の兵力を持つその部隊は、あっさりと突破を許してしまった。
敵にしてみれば、別に向かってくる相手全てを倒す必要はない。
突破できる場所を見つけて駆け抜け、こちらの主力の隊列をかき乱すことができれば、兄の役目は果たされている、ということのようだった。
そして、3度目、こちらの軍は重装兵部隊を差し向けた。
倒すことは考えなくてもよい。
重い甲冑を着込んで大盾を構えたその部隊は、簡単に倒れることはなく、歩兵主体の兄の部隊を確実に足止めするはずだった。
しかし、兄は重装兵部隊を確認すると、それを無視し、あっさりと迂回して主力に襲い掛かったのだという。
機動力で劣る鈍重な重装兵達は、それを食い止められなかった。
数で勝る敵を蹴散らす突破力と少人数の軽装歩兵による機動力を併せ持つ、それが兄の率いる部隊だった。