Evil Revenger 復讐の女魔導士 ─兄妹はすれ違い、憎み合い、やがて殺し合う─
「あれを殲滅するには、大部隊で包囲して一斉に叩くしかない」
大隊長は言った。
だがそれをすれば、今度は敵主力部隊への対応ができなくなる。
初戦の前ならあるいは、全部隊を二分すればそれも可能だったはずなのだが、数を減らされた今の状況で部隊を半分に分ければ、敵主力を食い止められない。
八方ふさがりの状況だった。
そこで、兄の部隊をわずかな手勢で食い止められる方法があると進言したのが、小隊長の1人、ロイオンだったそうだ。
その時上がったのが、私達2人の名前だったらしい。
彼は魔の谷での私達の戦いぶりから、兄を止められる可能性があると判断したのだという。
「今、この砦にいる兵士で、ヴィレントに対抗しうるのは、この2人しかいない!」
ロイオンは右手を広げ、私達の前でそう力説した。
そして今、私達は戦場にいる。
大部隊の最後尾。
まだ戦いは始まっていない。
斥候の兵士が兄の潜伏場所を探し出し、私達に伝えてくれる手筈だった。
「緊張しすぎだ。顔が強張っているぞ。もう少し肩の力を抜け」
横からネモにそう声を掛けられて、はっとする。
私は緊張していることを、自覚していなかった。
大きく息を吐く。
掌を目の前に広げると、震えているのがわかった。
私、兄さんと遂に、直接戦うんだ……。
恐れ、避け続けたあの兄と、直接、真っ向から。
魔の谷の作戦の時から、兄との直接対決をまったく予想しなかったわけではない。
だがあの作戦も、元々は崖上からの援護だけと聞いていたし、今後も数万人がぶつかる広い戦場で、たった2人が偶然相見えることなどそうそうないと、心のどこかで逃げていたのかもしれない。
あの谷でも、結果的に剣を振るう羽目になったのだ。
少し間違えば、あの時兄と出会い、剣を交えていたかもしれない。
あの初陣で兄と戦うことになっていたら、私は落ち着いていられただろうか?
今、戦う前からこんなに震えていては、初陣での交戦はかなり厳しいものになっただろうと思う。
そう考えると、今回の戦いに参加したこと自体、かなり危ういことだと思えた。
「ネモ。私は兄さんに勝てると思う?」
作戦が始まる前に、もう何度も似たような質問をした気がする。
だが、この場で自分を落ち着かせるためには、聞かずにはいられなかった。
大隊長は言った。
だがそれをすれば、今度は敵主力部隊への対応ができなくなる。
初戦の前ならあるいは、全部隊を二分すればそれも可能だったはずなのだが、数を減らされた今の状況で部隊を半分に分ければ、敵主力を食い止められない。
八方ふさがりの状況だった。
そこで、兄の部隊をわずかな手勢で食い止められる方法があると進言したのが、小隊長の1人、ロイオンだったそうだ。
その時上がったのが、私達2人の名前だったらしい。
彼は魔の谷での私達の戦いぶりから、兄を止められる可能性があると判断したのだという。
「今、この砦にいる兵士で、ヴィレントに対抗しうるのは、この2人しかいない!」
ロイオンは右手を広げ、私達の前でそう力説した。
そして今、私達は戦場にいる。
大部隊の最後尾。
まだ戦いは始まっていない。
斥候の兵士が兄の潜伏場所を探し出し、私達に伝えてくれる手筈だった。
「緊張しすぎだ。顔が強張っているぞ。もう少し肩の力を抜け」
横からネモにそう声を掛けられて、はっとする。
私は緊張していることを、自覚していなかった。
大きく息を吐く。
掌を目の前に広げると、震えているのがわかった。
私、兄さんと遂に、直接戦うんだ……。
恐れ、避け続けたあの兄と、直接、真っ向から。
魔の谷の作戦の時から、兄との直接対決をまったく予想しなかったわけではない。
だがあの作戦も、元々は崖上からの援護だけと聞いていたし、今後も数万人がぶつかる広い戦場で、たった2人が偶然相見えることなどそうそうないと、心のどこかで逃げていたのかもしれない。
あの谷でも、結果的に剣を振るう羽目になったのだ。
少し間違えば、あの時兄と出会い、剣を交えていたかもしれない。
あの初陣で兄と戦うことになっていたら、私は落ち着いていられただろうか?
今、戦う前からこんなに震えていては、初陣での交戦はかなり厳しいものになっただろうと思う。
そう考えると、今回の戦いに参加したこと自体、かなり危ういことだと思えた。
「ネモ。私は兄さんに勝てると思う?」
作戦が始まる前に、もう何度も似たような質問をした気がする。
だが、この場で自分を落ち着かせるためには、聞かずにはいられなかった。