Evil Revenger 復讐の女魔導士 ─兄妹はすれ違い、憎み合い、やがて殺し合う─
「俺は、ヴィレント・クローティスの戦いぶりを、直接見たことはない。だから推測しか言えないぞ?」
ネモは正直にそう答えた。
構わないから聞かせて、と私は返した。
ネモは頷いて、
「俺の見解では、今のお前に単独で勝てるのは、魔王領内でも魔王様ぐらいだと思っている」
もちろん現状は、俺が盾の制御を行った場合に限りだが、と彼は付け加える。
「それでも、まだ不安がある」
「それは……、もし兄さんが、魔王より強かったら……?」
彼は首を横に振った。
「俺が心配しているのは、そこじゃない」
彼は続ける。
「ヴィレント・クローティスの活躍を聞いたとき、お前と瓜二つだと、俺は思ったよ。お前の初陣の活躍を喜んでいたら、敵陣にまでお前がもう1人現れたような気分だった」
長い間、恐れてきた兄と瓜二つだと言われるのは、少し複雑な気持ちだった。
「お前達兄妹は、それぞれに比肩しうる才能を持っている。片方は実戦で長い時間をかけてじっくり腕を磨き、片方は訓練によって短期間で急激に成長した」
ネモは、そう分析する。
「俺は、お前が実力でヴィレントより劣るとは思っていない。俺が心配しているのは、経験の差だ」
経験……。
確かに兄は、両親が死んだ以降から、長い間、戦い続けていたはずだった。
「お前は、次でまだ2度目の戦場だ。圧倒的に経験が足りていない。何か不測の事態が起きた時、お前はそれでも冷静でいられるか?」
不測の事態、って何? と私は問い返す。
「例えば、俺が戦死した時だ。盾の制御はできなくなる。その時、お前は冷静に判断して、戦いを継続するか、撤退するか、選べるか?」
予想外の質問に、私は面食らう。
「えっ、なにそれ? 嫌だよ、ネモ。そんなこと考えないで! 私、あなたがいないと生きていけない!」
思わす彼の両肩を掴み、詰め寄って、泣きそうな顔で訴えた。
そんな私に、彼は苦い顔をして言った。
「戦場では、それだって可能性の1つだ。いや、戦死までいかなくとも、俺が両腕を負傷すれば援護はできなくなる。全力を発揮できなくなった状況で、それでもお前が冷静でいられるかということだ」
「それは……」
ネモは砦の会議でも、今の作戦に最後まで反対していた。
ネモは正直にそう答えた。
構わないから聞かせて、と私は返した。
ネモは頷いて、
「俺の見解では、今のお前に単独で勝てるのは、魔王領内でも魔王様ぐらいだと思っている」
もちろん現状は、俺が盾の制御を行った場合に限りだが、と彼は付け加える。
「それでも、まだ不安がある」
「それは……、もし兄さんが、魔王より強かったら……?」
彼は首を横に振った。
「俺が心配しているのは、そこじゃない」
彼は続ける。
「ヴィレント・クローティスの活躍を聞いたとき、お前と瓜二つだと、俺は思ったよ。お前の初陣の活躍を喜んでいたら、敵陣にまでお前がもう1人現れたような気分だった」
長い間、恐れてきた兄と瓜二つだと言われるのは、少し複雑な気持ちだった。
「お前達兄妹は、それぞれに比肩しうる才能を持っている。片方は実戦で長い時間をかけてじっくり腕を磨き、片方は訓練によって短期間で急激に成長した」
ネモは、そう分析する。
「俺は、お前が実力でヴィレントより劣るとは思っていない。俺が心配しているのは、経験の差だ」
経験……。
確かに兄は、両親が死んだ以降から、長い間、戦い続けていたはずだった。
「お前は、次でまだ2度目の戦場だ。圧倒的に経験が足りていない。何か不測の事態が起きた時、お前はそれでも冷静でいられるか?」
不測の事態、って何? と私は問い返す。
「例えば、俺が戦死した時だ。盾の制御はできなくなる。その時、お前は冷静に判断して、戦いを継続するか、撤退するか、選べるか?」
予想外の質問に、私は面食らう。
「えっ、なにそれ? 嫌だよ、ネモ。そんなこと考えないで! 私、あなたがいないと生きていけない!」
思わす彼の両肩を掴み、詰め寄って、泣きそうな顔で訴えた。
そんな私に、彼は苦い顔をして言った。
「戦場では、それだって可能性の1つだ。いや、戦死までいかなくとも、俺が両腕を負傷すれば援護はできなくなる。全力を発揮できなくなった状況で、それでもお前が冷静でいられるかということだ」
「それは……」
ネモは砦の会議でも、今の作戦に最後まで反対していた。