Evil Revenger 復讐の女魔導士 ─兄妹はすれ違い、憎み合い、やがて殺し合う─
本来は防げるはずのないタイミング。しかし、赤い盾はそれにさえも瞬時に反応し、真っ向から突きを受け止める。
恐怖に体が一瞬凍り付く、それほど恐ろしい突きだった。
ふう……
命拾いした。胸を撫でおろす。だが──
「避けろ、チェント!!」
ネモの上げた声に反応し、反射的に体をそらす。
次の瞬間、兄の右手で繰り出された剣は盾を真っ二つに割り、私の元いた場所に突き出されていた。
私の魔力で鉄のような堅さまで強化されたはずの盾をバラバラに。
割られた盾は地面を転がり、光を失ってただの木の盾に戻った。
「まず1つ目」
あくまで落ち着いた声で、兄が呟く。
私は後ろに大きく跳び、仕切りなおすために距離を取った。
盾を見ると、中央の浮遊石が粉々に砕かれている。
私は悟った。
本来は攻撃を受け流して相手の力を反らすはずのこの盾の守りを、兄は盾の中心を的確に何度も突くことで、受け流しを封じて盾そのものを破壊まで導いたのだ。
しかも、その間の私の攻撃を全てかわしながら。
その技量には感服するしかない。
これが、英雄ヴィレントの実力。
「チェント! 大丈夫か!?」
心配そうなネモの声が響いた。
こんな形で盾が破られることなど、彼にとっても予想外だったのだろう。
その声には焦りが見える。
「大丈夫、まだ負けてないよ」
兄からは視線を外さないまま、私は答えた。落ち着いた声で。
私が焦れば、彼がいつも落ち着かせてくれる。彼が焦った時は、私が落ち着かなければ。
私達は2人で戦っているのだから。
「まだ盾は2つ残ってる。だから大丈夫」
強がりを言っているつもりはない。
私も兄も、僅かではあるが軽く息が上がっていた。
お互いまだまだ戦える。だが、兄も決して消耗していないわけではないのだ。
きっと勝算はある。剣を構えなおす。
兄に休む暇を与えてはいけない。
もう一度前に跳び、私は大きく踏み込んだ。兄も剣を構えなおす。
再度、接近戦が始まる。
今、狙うべき場所は1つ。
私は前に出ながら、左手の赤い剣を振り上げる。
そして兄の胸元を狙って、思い切り振り下ろした。
だが兄はこちらの予想通り、自身の剣であっさりそれを受け止める。これは想定内。
今だっ!
私は右手の赤い剣を、左手の剣に十字に合わせるように叩きつけた。
恐怖に体が一瞬凍り付く、それほど恐ろしい突きだった。
ふう……
命拾いした。胸を撫でおろす。だが──
「避けろ、チェント!!」
ネモの上げた声に反応し、反射的に体をそらす。
次の瞬間、兄の右手で繰り出された剣は盾を真っ二つに割り、私の元いた場所に突き出されていた。
私の魔力で鉄のような堅さまで強化されたはずの盾をバラバラに。
割られた盾は地面を転がり、光を失ってただの木の盾に戻った。
「まず1つ目」
あくまで落ち着いた声で、兄が呟く。
私は後ろに大きく跳び、仕切りなおすために距離を取った。
盾を見ると、中央の浮遊石が粉々に砕かれている。
私は悟った。
本来は攻撃を受け流して相手の力を反らすはずのこの盾の守りを、兄は盾の中心を的確に何度も突くことで、受け流しを封じて盾そのものを破壊まで導いたのだ。
しかも、その間の私の攻撃を全てかわしながら。
その技量には感服するしかない。
これが、英雄ヴィレントの実力。
「チェント! 大丈夫か!?」
心配そうなネモの声が響いた。
こんな形で盾が破られることなど、彼にとっても予想外だったのだろう。
その声には焦りが見える。
「大丈夫、まだ負けてないよ」
兄からは視線を外さないまま、私は答えた。落ち着いた声で。
私が焦れば、彼がいつも落ち着かせてくれる。彼が焦った時は、私が落ち着かなければ。
私達は2人で戦っているのだから。
「まだ盾は2つ残ってる。だから大丈夫」
強がりを言っているつもりはない。
私も兄も、僅かではあるが軽く息が上がっていた。
お互いまだまだ戦える。だが、兄も決して消耗していないわけではないのだ。
きっと勝算はある。剣を構えなおす。
兄に休む暇を与えてはいけない。
もう一度前に跳び、私は大きく踏み込んだ。兄も剣を構えなおす。
再度、接近戦が始まる。
今、狙うべき場所は1つ。
私は前に出ながら、左手の赤い剣を振り上げる。
そして兄の胸元を狙って、思い切り振り下ろした。
だが兄はこちらの予想通り、自身の剣であっさりそれを受け止める。これは想定内。
今だっ!
私は右手の赤い剣を、左手の剣に十字に合わせるように叩きつけた。