Evil Revenger 復讐の女魔導士 ─兄妹はすれ違い、憎み合い、やがて殺し合う─
 激しい火花が散る。歯を食いしばって私の全力を込めた。
 それが持ちこたえたのは、そう長い時間ではなかった。

「!?」

 派手な異音を立てて、遂に兄の剣が折れる。
 私の2本の剣は、兄の剣の守りを突き抜け、その体に襲い掛かった。
 だが兄はそれを本当に、本当にギリギリのところで体を反らして避け、後ろに下がった。
 あのタイミングでまた逃した。どこまでも驚異的な反応。
 しかし、形勢は完全に逆転した。
 兄の剣の切っ先は、ちょうど刃の長さ半分程度のところで、砕け飛んでいた。
 やった!
 狙い通り。あれだけ何度も、私の赤い剣と刃をぶつけあっていたのだ。以前から槍の柄程度なら、一振りで斬り飛ばしてきた私の魔力剣と。
 むしろ兄の剣は、ここまでよく持ちこたえたと言うべきなのだろう。それなりの業物だったのかもしれない。
 大きく息を吐く。思わず笑みがこぼれた。
 勝てる! 私、兄さんに勝てる!
 長い間、私を苦しめてきたこの人に、遂に一矢報いるのだ。
 一方、兄は大きく焦りを見せることなく、構えたまま折れた切っ先を見つめていた。
 武器を壊されても落ち着いている。一瞬、退却するかもと考えたが、今のところそういう様子はなかった。
 どのみち退却を許すわけにはいかない。
 こちらは貴重な盾を一枚失ってしまったし、武器を整え直されて再戦ともなれば、次の結果はわからないからだ。
 私はじりじりと、ゆっくり間合いを詰めていった。
 油断はしない。隙を見せたら、一撃で決める。
 兄は先程から同じ姿勢で、折れた剣を構えたままピクリとも動かない。
 味方もまだ戦っている。まだ、どちらが優勢ともいえない状況に見えた。
 ここで兄を討てれば、士気は一気に傾くはずだった。
 あと数歩踏み込めば、剣が届く。その間合いまで近づいた瞬間、私は仕掛けた。
 目一杯姿勢を低くして迫る。

「はっ!」

 そして2本の剣で、今まで以上の激しい攻勢に出た。
 相手のリーチは半減している。間合いの外からの攻撃なら、そう簡単に反撃を許さない。
 兄は必死に、赤い刃をかわしていた。
 防御に剣を使っていない。これ以上下手に受けて、剣が全く使い物にならなくなるのを避けているのかもしれない。
 ならば猶更、私は大胆に攻められる。
 兄はどんどん後ろに下がる。私は前に出る。それはもはや、一方的な展開に思えた。
< 72 / 111 >

この作品をシェア

pagetop