Evil Revenger 復讐の女魔導士 ─兄妹はすれ違い、憎み合い、やがて殺し合う─
 それでも、多少の痛手にはなるはずなので、実行しておく。
 もし敵本隊が近くにいたら、煙を見て引き返してくるかもしれない。私はさっさと立ち去ることにした。
 外はまだ薄暗い。
 陣の出入り口をくぐる。ちょうどその時、誰かが陣の外側の遠くから走ってくる気配がした。
 本隊が戻ってきたのかと身構えるが、向かってくる人影は1人のようだった。
 たった1人の兵士なら、何も恐れることはない。
 応戦するため、赤い剣だけを準備する。
 やがて、その姿が鮮明となる。
 それは、剣を腰に下げた1人の青年だった。
 彼と私の視線が合う。
 なぜ、このタイミングで彼と出会うのだろう。

「……スキルド?」
「チェント!?」

 そこに現れたのは、かつていつも私を気にかけてくれた青年。
 シルフィの双子の兄。
 スキルド・ディバードの姿だった。
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