Evil Revenger 復讐の女魔導士 ─兄妹はすれ違い、憎み合い、やがて殺し合う─
そんな私に構わず、兄の姿は森の奥へと消えていく。静寂が訪れた。
1人で森の出口を目指すのは怖い。赤い空のある家の方に向かうのも怖い。
私はなんとか立ち上がり、迷った挙句に出口に向かってゆっくりと歩きだした。
泣きべそをかきながら歩き、出口にたどり着く。
私はそこで座り込み、母達の到着を待った。
父さん……怖いよう。母さん……兄さん……寂しいよう。
その時間はとても長かった。やがて夜が明ける。
森の奥から人影が近づいてきた。
私はそれに気づいて立ち上がる。
人影は1つきり。それは兄の姿だった。
兄は肩を落とし、真っ赤に泣きはらした目をしながら、俯いたままこちらにゆっくりと歩いてきた。
「兄さん!」
心細かった私は、駆けよってすぐに尋ねた。
「父さんと母さんは……?」
兄はすぐには答えず、しばらく沈黙していた。
涙を流しながら、やがてゆっくりと口を開く。
「……父さんと母さんは、死んだ」
その言葉の意味は理解できても、それはまるで現実感がなく、すぐに涙は出なかった。
兄は森の外に向かって歩き出す。
「兄さん、どこにいくの? 家には……」
「あの家にはもう戻れない」
兄は俯いたまま、はっきりとそう告げた。
じゃあ、どこに行くの? と私が尋ねると、
「まだ魔王の追手が俺達を探しているかもしれない。それに家はもうない。全部焼けてしまった」
まだ事実を受け止められないでいる私に、兄は残酷な現実を突きつけた。
私はそれを確かめようと、家の方に向かって駆け出した。だが、兄はすぐに私の手を捕まえて引っ張った。
「戻っちゃダメだ、チェント! まだ母さんたちを殺した奴らが森の中にいるかもしれないんだ!」
「嫌だよぉ……お家に帰りたいよぉ……」
私は愚図って手を振り回したが、兄はしっかりと腕を掴み、振りほどかせなかった。
「チェント、もう母さんたちはいないんだよ……」
涙声でその事実を噛み締めるように、兄は言った。
遂に私もつられるようにして、泣き出した。
「泣くな、チェント」
自身も泣くのを必死に堪えながら、兄は私の頭に手を置いた。
「母さんたちはもういないけど、もういないから……。これからは俺が──」
その時に続けた兄の言葉を、私はよく覚えていない。
兄は、何と言ったのだったか……。
1人で森の出口を目指すのは怖い。赤い空のある家の方に向かうのも怖い。
私はなんとか立ち上がり、迷った挙句に出口に向かってゆっくりと歩きだした。
泣きべそをかきながら歩き、出口にたどり着く。
私はそこで座り込み、母達の到着を待った。
父さん……怖いよう。母さん……兄さん……寂しいよう。
その時間はとても長かった。やがて夜が明ける。
森の奥から人影が近づいてきた。
私はそれに気づいて立ち上がる。
人影は1つきり。それは兄の姿だった。
兄は肩を落とし、真っ赤に泣きはらした目をしながら、俯いたままこちらにゆっくりと歩いてきた。
「兄さん!」
心細かった私は、駆けよってすぐに尋ねた。
「父さんと母さんは……?」
兄はすぐには答えず、しばらく沈黙していた。
涙を流しながら、やがてゆっくりと口を開く。
「……父さんと母さんは、死んだ」
その言葉の意味は理解できても、それはまるで現実感がなく、すぐに涙は出なかった。
兄は森の外に向かって歩き出す。
「兄さん、どこにいくの? 家には……」
「あの家にはもう戻れない」
兄は俯いたまま、はっきりとそう告げた。
じゃあ、どこに行くの? と私が尋ねると、
「まだ魔王の追手が俺達を探しているかもしれない。それに家はもうない。全部焼けてしまった」
まだ事実を受け止められないでいる私に、兄は残酷な現実を突きつけた。
私はそれを確かめようと、家の方に向かって駆け出した。だが、兄はすぐに私の手を捕まえて引っ張った。
「戻っちゃダメだ、チェント! まだ母さんたちを殺した奴らが森の中にいるかもしれないんだ!」
「嫌だよぉ……お家に帰りたいよぉ……」
私は愚図って手を振り回したが、兄はしっかりと腕を掴み、振りほどかせなかった。
「チェント、もう母さんたちはいないんだよ……」
涙声でその事実を噛み締めるように、兄は言った。
遂に私もつられるようにして、泣き出した。
「泣くな、チェント」
自身も泣くのを必死に堪えながら、兄は私の頭に手を置いた。
「母さんたちはもういないけど、もういないから……。これからは俺が──」
その時に続けた兄の言葉を、私はよく覚えていない。
兄は、何と言ったのだったか……。