Evil Revenger 復讐の女魔導士 ─兄妹はすれ違い、憎み合い、やがて殺し合う─
大事なことだったような気がする。しかし、私はそれをどうしても思い出せないでいた。
血に濡れたベスフル軍の本陣の前で、私とスキルドは再会した。
スキルド……。
私は呆然と、彼を見つめいてた。
どういう顔をすればいいかわからなかった。
お互いしばらく立ち尽くしていたが、彼は、
「……チェントだよな? こんなところにいたのか!?」
無くしたものをようやく見つけた、とばかりに駆け寄ってきた。
「来ないで!!」
私は思わず叫んでいた。
彼の足が止まる。私の言葉に戸惑っているようだった。
「……チェント?」
彼は右手を前に伸ばしたまま、固まっている。
「兄さんから聞いていないの? 私、魔王軍にいるんだよ? 敵なんだよ?」
私は目を伏せたまま、彼に告げた。
淡々と言ったつもりだったが、僅かな声の震えを隠しきれていなかった。
かつて私を気にかけてくれた彼に敵対することを、私は恐れているのだろうか?
「いや……聞いてはいたさ。でも、俺には……何かの間違いだとしか思えなくて……」
彼は首を横に振り、答えた。
「間違いじゃないよ。私は兄さんと戦った」
「!?」
あっさり言った私の言葉に、彼は絶句した。
「う、嘘だろ……? どうして、そんなことに!?」
スキルドの驚く理由が、私にはよくわからなかった。
彼は私が兄に何をされてきたか、知っているはずだったのに。
「何が不思議なの? あなたは私が兄さんを憎む理由を、よく知っているはずじゃない?」
察しの悪いスキルドに受け答えしていると、最初にあった声の震えは収まっていた。
彼はこんなに物分かりの悪い人だったのか? 少し落胆する。
「お前がヴィレントを恨んでいるのはよく知ってるよ。けど、まさかそんな……。戦場でお前達が斬り合うことになるなんて、俺は……」
彼の顔には、信じられないという表情が浮かんでいた。それが嘘であってほしいと、願うように。
私はそれを、冷ややかな目で眺めた。
「やめよう、チェント! 兄妹が争うなんて馬鹿げている。今からでも遅くない! 戻ってこい!」
彼は両手を広げ、必死に訴えてきた。
あまりにも現実が見えていない。その言葉に、大きなため息が漏れた。
「スキルド。私はもうベスフルには戻れないんだよ。見て」
血に濡れたベスフル軍の本陣の前で、私とスキルドは再会した。
スキルド……。
私は呆然と、彼を見つめいてた。
どういう顔をすればいいかわからなかった。
お互いしばらく立ち尽くしていたが、彼は、
「……チェントだよな? こんなところにいたのか!?」
無くしたものをようやく見つけた、とばかりに駆け寄ってきた。
「来ないで!!」
私は思わず叫んでいた。
彼の足が止まる。私の言葉に戸惑っているようだった。
「……チェント?」
彼は右手を前に伸ばしたまま、固まっている。
「兄さんから聞いていないの? 私、魔王軍にいるんだよ? 敵なんだよ?」
私は目を伏せたまま、彼に告げた。
淡々と言ったつもりだったが、僅かな声の震えを隠しきれていなかった。
かつて私を気にかけてくれた彼に敵対することを、私は恐れているのだろうか?
「いや……聞いてはいたさ。でも、俺には……何かの間違いだとしか思えなくて……」
彼は首を横に振り、答えた。
「間違いじゃないよ。私は兄さんと戦った」
「!?」
あっさり言った私の言葉に、彼は絶句した。
「う、嘘だろ……? どうして、そんなことに!?」
スキルドの驚く理由が、私にはよくわからなかった。
彼は私が兄に何をされてきたか、知っているはずだったのに。
「何が不思議なの? あなたは私が兄さんを憎む理由を、よく知っているはずじゃない?」
察しの悪いスキルドに受け答えしていると、最初にあった声の震えは収まっていた。
彼はこんなに物分かりの悪い人だったのか? 少し落胆する。
「お前がヴィレントを恨んでいるのはよく知ってるよ。けど、まさかそんな……。戦場でお前達が斬り合うことになるなんて、俺は……」
彼の顔には、信じられないという表情が浮かんでいた。それが嘘であってほしいと、願うように。
私はそれを、冷ややかな目で眺めた。
「やめよう、チェント! 兄妹が争うなんて馬鹿げている。今からでも遅くない! 戻ってこい!」
彼は両手を広げ、必死に訴えてきた。
あまりにも現実が見えていない。その言葉に、大きなため息が漏れた。
「スキルド。私はもうベスフルには戻れないんだよ。見て」