Evil Revenger 復讐の女魔導士 ─兄妹はすれ違い、憎み合い、やがて殺し合う─
そう告げながら、すぐ後ろで血だまりに倒れている見張りの兵士達を振り返った。
今まで気づかなかったわけがないのに、まるで彼はそれに初めて気づいたかのように表情を凍り付かせた。
「私が1人でやったんだよ。他の戦場でもベスフルの兵士をたくさん斬った。だから、もう戻れないんだよ」
優しい声で、彼に教えてやった。
彼は両手で頭を抱えて首を振ると、今度は泣きそうな顔をして俯いた。
「……すまない」
彼は謝った。なぜここで彼が謝るのだろう? 彼がどういうつもりなのか、よくわからなかった。
「すまない、チェント。俺が……俺があの時、お前を助けられていれば……俺があの時もっと強ければ、こんなことにはならなかったのに……!」
ああそうか。ようやく合点がいった。
彼はベスフルで私がさらわれた時のことを、ずっと気に病んでいたのだろう。
そういえば彼は、私を助けようとした時に浅くはない怪我まで負っていたはずだったが、今の今まで私はすっかり忘れていた。
もしスキルドがあの時、私を助けられるほど強かったら。あの時、さらわれて魔王領まで連れてこられることがなかったら。
ネモとの出会いもなく、私はずっと兄に怯えて暮らし続けていたかもしれない。
スキルドが弱かったから、おかげでネモに出会えた。
そういう意味では、彼に感謝してもいいのかもしれない。
そんな私の気持ちなど知りもせず、彼は謝り続けていた。
「もう気にしないで、スキルド」
私はできるだけ優しく穏やかに、彼に告げた。
「だって、魔王領に連れてこられたおかげで、こんなに強くなれたんだよ? 私」
兄さんとだって戦えるんだから、と笑いかけた。
「そんな、どうして……どうしてそうなっちまったんだ!」
彼は肩と腕を震わせて、心底無念そうに呟いた。
「チェント。ヴィレントはな、あいつはあいつで……気の毒なやつなんだよ」
スキルドは意外なことを言った。
兄が気の毒? よくわからないことを言う。
あなたは何を知っているの?
「あいつはお前を殴ってしまったその日から、ずっと母親の影に責められ続けているんだ」
母さんの……影?
「ヴィレントから聞いたんだ。あいつは母親の死に際にチェント、お前を必ず守るように頼まれたと言っていた」
母さんが私を守るように……?
今まで気づかなかったわけがないのに、まるで彼はそれに初めて気づいたかのように表情を凍り付かせた。
「私が1人でやったんだよ。他の戦場でもベスフルの兵士をたくさん斬った。だから、もう戻れないんだよ」
優しい声で、彼に教えてやった。
彼は両手で頭を抱えて首を振ると、今度は泣きそうな顔をして俯いた。
「……すまない」
彼は謝った。なぜここで彼が謝るのだろう? 彼がどういうつもりなのか、よくわからなかった。
「すまない、チェント。俺が……俺があの時、お前を助けられていれば……俺があの時もっと強ければ、こんなことにはならなかったのに……!」
ああそうか。ようやく合点がいった。
彼はベスフルで私がさらわれた時のことを、ずっと気に病んでいたのだろう。
そういえば彼は、私を助けようとした時に浅くはない怪我まで負っていたはずだったが、今の今まで私はすっかり忘れていた。
もしスキルドがあの時、私を助けられるほど強かったら。あの時、さらわれて魔王領まで連れてこられることがなかったら。
ネモとの出会いもなく、私はずっと兄に怯えて暮らし続けていたかもしれない。
スキルドが弱かったから、おかげでネモに出会えた。
そういう意味では、彼に感謝してもいいのかもしれない。
そんな私の気持ちなど知りもせず、彼は謝り続けていた。
「もう気にしないで、スキルド」
私はできるだけ優しく穏やかに、彼に告げた。
「だって、魔王領に連れてこられたおかげで、こんなに強くなれたんだよ? 私」
兄さんとだって戦えるんだから、と笑いかけた。
「そんな、どうして……どうしてそうなっちまったんだ!」
彼は肩と腕を震わせて、心底無念そうに呟いた。
「チェント。ヴィレントはな、あいつはあいつで……気の毒なやつなんだよ」
スキルドは意外なことを言った。
兄が気の毒? よくわからないことを言う。
あなたは何を知っているの?
「あいつはお前を殴ってしまったその日から、ずっと母親の影に責められ続けているんだ」
母さんの……影?
「ヴィレントから聞いたんだ。あいつは母親の死に際にチェント、お前を必ず守るように頼まれたと言っていた」
母さんが私を守るように……?