身代わり少女は主人を慕う
私が失敗すれば、自分がお慕いしている音羽さんが、笑われると思っているのだ。

「もう一度、最初からやりましょう。」

「はい。」

そんな時、私は自分が”音羽さん”だと言い聞かせる。

私は”うた”じゃない。

この家の、お嬢様なんだと。


「何でしょう。心、ここにあらずと言った感じですね。」

亮成さんの言葉に、ドキッとした。

「そう言えば、将吾様が仰っておりました。」

「将吾様が?」

私は顔を上げた。

「不安も大きいだろうけど、うたなら、大丈夫だと。」


- うた。

  うたなら、大丈夫だよ。 -


そんな声が、向こう側から聞こえてきそうだ。

「……はい。私、頑張ります。」

涙を拭きながら、私はもう一度座り直した。

「お願いします、亮成さん。」
  
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