身代わり少女は主人を慕う
「将吾様。私、村に帰ります。」

「うた、あのな……」

私は、首を横に振った。

「分かっています。」


将吾様に、私は相応しくないって事ぐらい。

でも……


「お気持ち、本当に嬉しかった。」

「うた……」

「お元気で。さようなら。」

「うた!」

将吾様の手が、私の腕を掴む。

「うた。俺が言った事、嘘じゃない。」

「はい。」

「だが、俺はこの家の者で……」

「はい。」

それ以来、将吾様は黙ってしまった。


「それで、いいんです。将吾様。」

将吾様は、顔を上げた。

「それでこそ、私がお慕いした将吾様です。」

私は、ニコッと笑顔を見せた。


「うた、行くぞ。」

はやてが、私を急かす。

「では、将吾様。また会う時まで。」

そんな日が来るとは、思えないけれど。

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