身代わり少女は主人を慕う
「ああ。」

将吾様は、そっと私の腕を放した。

私は最後に頭を下げて、屋敷を後にした。


しばらく歩くと、寂しくて胸が潰れそうになった。

「あれでいいんだ。うた。」

はやてが、私の手を繋いでくれた。

「うん。」

「あの屋敷で過ごした日々は、夢だと思えばいいんだ。」

「そうだね。」


全ては、夢だったのかもしれない。

綺麗な着物を着て、髪にりぼんを巻いて。

行った事もないような、女学校に行かせてもらって。

そして……

将吾様と、夢のような恋をして……


いい夢だった。

つらい事もあったけれど、楽しい夢だった。


「ふははは。」

「うた?」

はやては、不思議そうな顔をした。

「あれが夢だったら、もしかして、また見たりする事ができるのかな。」
< 139 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop