身代わり少女は主人を慕う

あの時の私は、この状況を１ｍｍも、想像できていなかっただろう。

そして朝食が終わり、女学校へ行く準備もできた時だ。

「それでは、行ってくるよ。」

将吾様は今日も、私の部屋から仕事に向かった。

「行ってらっしゃいませ。」

ちゃんと、両手をついてできた。

「うた。」

名前を呼ばれ、顔を上げると、そこにはあのくしゃっとした笑顔があった。

「上出来だ。」


褒められた。

初めて、将吾様に褒められた。

私は、密かに喜びをかみしめていた。


そんな時、奥からこんな声が聞こえてきた。

「奥様、お出かけですか？」

「ええ。音羽が久しぶりに女学校へ行くでしょう。粗相をしたお詫びに行くのよ。」

そう言って、奥様が私の部屋に近づいて来た。

「おはよう……ございます。」