身代わり少女は主人を慕う
「痛い……」

角の出会いかしらにぶつかったから、お互い顔を押さえている。

「すみません。」

取り合えず謝ると、ぶつかった相手は、顔を上げた。

「えっ?音羽さん?」

私を見て、驚いている。


「美晴様です。」

「美晴様?」

「宗吾様の奥様です。」

耳打ちで志麻さんが、教えてくれた。


「美晴様、お久しぶりです。」

「はあ?美晴様?」

「あっ、いえ……」

ああ、何て呼んでいたんだろう。

志麻さんは、澄ましているし。

誰か、助けて。


「まあ、いいわ。なぜ戻って来たの?」

「はい?」

美晴さんは、ハッとして口を覆った。

「何でもないのよ。無事で何よりだわ。」

そう言って美晴さんは、私を追い越して、行ってしまった。


怪しい。

もしかして、あの人がこの一件に、絡んでいるじゃあ!
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