星降る夜の奇跡をあなたと

推測

「話は戻るけど、無かったことに
 するって何?」

サラッと意地悪な顔をして聞いてきた。
そうですよねー。
自分が口走ったのが悪いのだが。

「合コンの帰りに蓮が家まで送って
 くれたの。そしたら帰り際に
 キスされて。でも連絡先も
 知らないし、私も医学科棟まで
 押しかけるような事はしたく
 なかったし。
 初めての合コンだったから、
 こういう物なんだ、雰囲気に
 流されたんだって思うようにしてた」

蓮は大きく溜息をついて、
“俺、やらかしてるねぇ”と
バツが悪そうな顔して言いつつも、
“和奏、おいで”と腕を広げた。
テーブルを挟んで反対側に座っている
蓮に近付き、私は、蓮の足の間に
挟まれる様に収まった。
同じシャンプーを使っているのに
どこか違うように感じる蓮の髪の香り
が鼻先を擽る。

「っで、昨日のも無かったことに
 されると思った?」

無言で頷く私に、蓮は話を続ける。

「あくまで想像だけど、未来の俺は
 きちんと和奏の存在を知っている
 と思う。じゃなきゃ6年の
 忙しい時期にわざわざ合コンに行く
 なんて考えられない。俺が和奏に
 近況を話したのは、和奏がこっちの
 世界に来て、その事を過去の俺に
 伝わる様に想定して言ったとしたら。
 曲だって、元々、誰かに聞かせたくて
 作ってたわけじゃないのに、配信して、
 更に配信日が俺たちに関わりがある日
 だなんて。
 合コンは、和奏に接触するため。
 配信は、和奏に気付いて貰うため。
 キスは多分俺が抑えられなかった。
 そう考えたら辻褄が合うと思わない?」

笑みをこぼし言う、蓮の言葉は絶大だ。

「昨日のキスも未来のキスも
 無かったことになんて絶対
 させない」

強く抱きしめ、そう言ってくれた蓮に
確かな愛を感じた。
ここまでの想像が合ってるとしたら、
私は戻る事になるだろう。
判断材料としては少ないけれど、
私達の中で、おそらく12月14日の
“ふたご座流星群”がキーポイント
なのだと踏んだ。だったら残りの期間、
私達は悔いが残らない様に過ごそうと
決め、“ふたご座流星群”まで
One Treeへ行く事をやめた。
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