星降る夜の奇跡をあなたと

蓮の誕生日

迎えた当日、私は朝からドキドキだ。
でもバレンタインの時みたいに
バレたくない私はとにかく
気を引き締めた。
下ごしらえは出来るだけ
昨日の夕食を用意しながらやった。
装飾品も集めた。
あとはどれだけ蓮に気付かれず、
準備が出来るかだ。
事前に蓮の勉強中に買い物に行くと
伝えておき、蓮が部屋に籠もるタイミングを待って、私はケーキを取りに行った。
“御確認お願いします”と見せられた
ケーキは言葉では言い表せない位、
素晴らしく、イメージ通りだった。
急いで帰り、壁にはHappy Birthday
の文字とペーパーフラワーで装飾。
テーブルにはペーパーフラワーと
同系色のランチョンマット、グラス。
この日の為に百均や雑貨屋さんで
集めたのだ。手作り感満載だが、
これが私の出来る精一杯。
蓮がどうか喜んでくれますように…。
準備が整い、蓮が出てくるのを
クラッカーを持ち、待った。

カチャっとドアが開く音がして、
蓮が出できた瞬間、
“ハッピーバースデー”とクラッカーを
鳴らした。“えっ!?えっ!?”と
驚きを隠せていない蓮の姿に
もうすでに私は満足気だ。

「お誕生日おめでとう」

「えっ、ありがとう。
 っていうかいつの間に?」

「蓮が籠もってる間に。
 バレンタイン、バレバレだった
 みたいだから、
 今回は私なりに頑張りました」

「自分の誕生日だとは気付いていたけど、
 和奏の動きには気付かなかったよ」

蓮は勉強が一段落したとの事で、
そのままお祝いをすることにした。
料理を温め、冷蔵庫から
ロゼワインを出した。
蓮は今日で20歳だ。雰囲気だけでも
味わえたらと思って用意した。
グラスにワインを注ぎ、改めて
“お誕生日おめでとう”と乾杯をした。
蓮は喜んでいてくれているようで、
“美味しい、美味しい”と
終始ニコニコしながら食べてくれ、
私も嬉しくなった。
そろそろかなと立ち上がり、
冷蔵庫へ向かった。
箱からケーキを出し、蓮の前へと
持っていった。

「これ、One Tree?」

「そう。イメージを伝えたらその通りに
 作ってくれるお店があって。
 星空の中に立つOne Treeが良いなって
 思って。すっごい素敵に仕上がってる
 よね?」

蓮が私を引き寄せ、蓮の胸の中にすっぽり
埋まった。私が顔を上げると蓮は
“すっごい最高。ホントありがとう”と
キスをした。誕生日のキスは
甘い香りに混じり、お酒の味がした。
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