夢を叶えた日、一番にきみを想う
「おい、誰だよ、さっきの」
「先生」
「先生? あんな人いたか?」
「もう一つの校舎から、手伝いで来ているんだって」
「ふうん、お前ラッキーだな」
「なにが?」
「え、可愛かったじゃん。普通に羨ましいんだけど」
「先生なんてー…」

“どいつもこいつも一緒だろ” 

そう続けようとしたけれどー…もしかしたら、違うのかもしれない。

確証はないけれど。
なんとなくだけれど。

今日はそう思った。


「お、来た来た」

駐輪場に着くと、俺と祐樹の幼馴染でもあり、同じ高校に通う佑真がひらひらと手を振った。

「尚樹、お前今日沙帆ちゃんが担当だったんだろ? いいよな~」

俺も担当してほしいわ、と佑真は口をとがらせる。

「……沙帆ちゃん?」

ああ、あれか、先生の下の名前か。
確か、吉川沙帆だっけ。

……“沙帆ちゃん”って呼ばれているんだ。

「どうせ勉強詰めの憂鬱な時間を過ごすのなら、可愛い人と過ごしたいよな」
「わかる。俺らバカだから、授業の違いとかわかんねーしな」
「……それは違うだろ」

気が付けば、祐樹の言葉を否定していた。

「尚樹?」
「わりー、先帰ってて」
「は? あ、おい!」

祐樹と佑真の焦った声を背中で受け止めながら、俺は来た道を戻る。
エレベーターが5階に停まっていると分かると、待っている時間が惜しく感じて、非常階段で5階まで駆けのぼった。
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