夢を叶えた日、一番にきみを想う
「あ、尚樹くん!」

駐輪場へ戻ると、違う生徒たちと話していた先生に呼ばれる。

「入れ違いになっちゃったみたい。これ、面談室に落ちていたよ」

先生はポン、と、手のひらに自転車の鍵をのせた。

「ありがとう」

俺は受け取ったばかりの鍵を自転車に差し込み、待ってくれていた佑真と祐樹に並んだ。

「気を付けて帰ってね?」
「「はーい!」」

声を揃えて返事をする2人に、先生は「いいお返事」と笑うと、俺たちに背を向けた。

「沙帆ちゃん」

思い切って、いつもより少し大きめの声を出す。
振り返った沙帆ちゃんは俺に呼ばれると思っていなかったのか、珍しいものを見たかのようにポカンと口を開けていた。

その間抜け顔に少し笑いがこみあげながらも、

「沙帆ちゃん、バイバイ!」

別れの挨拶を告げる。すると沙帆ちゃんは、やっとふわりと笑った。

「バイバイ、尚樹!」

今まで幾度となく名前は呼ばれてきたのに、名前を呼んでもらえたことに、心が弾んだ。

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