夢を叶えた日、一番にきみを想う
「えー、何それ」
「おい、祐樹」
これ以上何も言うなよ、と睨む。
実優は俺が女子とあまり関わらないからか、少しでも女子と話したり、女子の話をしたりすると、すごく気にする。
一度祐樹に愚痴った時、彼は「2年も付き合っているのにまだ嫉妬してくれるなんて可愛いじゃん」と返されたけれど、ただ異性と話すだけで―それも日直の仕事とかで仕方が無く話すだけで―不機嫌になる彼女を、正直に言うと面倒に思ってしまっていた。それに実優は、一度機嫌を損ねたらなかなか直らないのだ。
俺の睨みが効いたのか、祐樹は「はいはい」と頷いた。
「それにしても、そのプリント、沙帆ちゃんの手作り?」
「そうらしいな」
「へえ、すげえな」
沙帆ちゃんの授業では、最初に10分間の単語テストが行われる。
「英単語も頑張って覚えようね」
初めて授業を受けた時、俺の単語力の無さに沙帆ちゃんは少しびっくりしていた。当然だ。中学時代から真面目に授業すら受けていない俺は、きっと中学1年で習う英単語さえまともに書けない。
ちなみに、単語テストが行われるようになったのは、“犬”をdogではなくbogと書いたことがきっかけだった。
「それにしてもなあ、尚樹が勉強するとは」
「うるせえよ」
口ではそう答えながらも、俺も正直同感だ。
今まではテストがあろうが、何も気にしなかった。
別に何点でも、例え0点でも、どうでもよかったから。
ただ、沙帆ちゃんが担当になってからは、少しだけ気持ちに考え方に変化があった。
「見て、これ。次の単語テストの範囲なんだけど」
沙帆ちゃんは2回目の授業中、茶目っ気たっぷりに、そして少し得意げに1枚のプリントを俺の前に掲げた。
「例文で、尚樹が最近ハマっているって言っていたアニメのセリフも載せておいたよ!」
先週、雑談をしていた時にポロッと話したことを覚えていてくれたようで、沙帆ちゃんはそのアニメを見てくれたらしい。
「どうせなら楽しみながら勉強したほうが良いでしょ?」
さすがに自分専用のプリントまで作ってもらって、悲惨な点数を取ってしまうのは忍びない。
だから、初めてのテストが行われた先週は、その日の授業すべてをこの単語を覚えることに費やした。
ただ、もう一度言うけれど、俺は中学生の時から―いや、小学生の時からーまともに勉強をしていない。
傍から見たら簡単な英単語でも、俺にとって30個の単語を覚えるのは一苦労でー…1日かけて覚えたのに、テストで正しく書くことが出来たのはたったの9個だった。
「……次からは、もう少し良い点数取れるように頑張ろうね」
沙帆ちゃんの笑顔は寂しそうで、しっかり覚えて来なかったことを少し後悔した。
「おい、祐樹」
これ以上何も言うなよ、と睨む。
実優は俺が女子とあまり関わらないからか、少しでも女子と話したり、女子の話をしたりすると、すごく気にする。
一度祐樹に愚痴った時、彼は「2年も付き合っているのにまだ嫉妬してくれるなんて可愛いじゃん」と返されたけれど、ただ異性と話すだけで―それも日直の仕事とかで仕方が無く話すだけで―不機嫌になる彼女を、正直に言うと面倒に思ってしまっていた。それに実優は、一度機嫌を損ねたらなかなか直らないのだ。
俺の睨みが効いたのか、祐樹は「はいはい」と頷いた。
「それにしても、そのプリント、沙帆ちゃんの手作り?」
「そうらしいな」
「へえ、すげえな」
沙帆ちゃんの授業では、最初に10分間の単語テストが行われる。
「英単語も頑張って覚えようね」
初めて授業を受けた時、俺の単語力の無さに沙帆ちゃんは少しびっくりしていた。当然だ。中学時代から真面目に授業すら受けていない俺は、きっと中学1年で習う英単語さえまともに書けない。
ちなみに、単語テストが行われるようになったのは、“犬”をdogではなくbogと書いたことがきっかけだった。
「それにしてもなあ、尚樹が勉強するとは」
「うるせえよ」
口ではそう答えながらも、俺も正直同感だ。
今まではテストがあろうが、何も気にしなかった。
別に何点でも、例え0点でも、どうでもよかったから。
ただ、沙帆ちゃんが担当になってからは、少しだけ気持ちに考え方に変化があった。
「見て、これ。次の単語テストの範囲なんだけど」
沙帆ちゃんは2回目の授業中、茶目っ気たっぷりに、そして少し得意げに1枚のプリントを俺の前に掲げた。
「例文で、尚樹が最近ハマっているって言っていたアニメのセリフも載せておいたよ!」
先週、雑談をしていた時にポロッと話したことを覚えていてくれたようで、沙帆ちゃんはそのアニメを見てくれたらしい。
「どうせなら楽しみながら勉強したほうが良いでしょ?」
さすがに自分専用のプリントまで作ってもらって、悲惨な点数を取ってしまうのは忍びない。
だから、初めてのテストが行われた先週は、その日の授業すべてをこの単語を覚えることに費やした。
ただ、もう一度言うけれど、俺は中学生の時から―いや、小学生の時からーまともに勉強をしていない。
傍から見たら簡単な英単語でも、俺にとって30個の単語を覚えるのは一苦労でー…1日かけて覚えたのに、テストで正しく書くことが出来たのはたったの9個だった。
「……次からは、もう少し良い点数取れるように頑張ろうね」
沙帆ちゃんの笑顔は寂しそうで、しっかり覚えて来なかったことを少し後悔した。