夢を叶えた日、一番にきみを想う
「あれ? 市川の友達?」

きっと市川の友達だろう。
市川の隣に立ち、市川と同じ制服を着ていた。

「意外だね? 彼みたいな人と友達だなんて」

攻撃的な視線を俺に向ける。

「……おい」

初めて会ったはずなのに、いかにも意味ありげに言った、そして見下したような言葉がひっかかる。

「友達なんかじゃないよ」

市川は冷ややかな目で、はっきりと言った。

「部活も勉強もろくにしない、こんなだらしない人間と友達な訳ないじゃん」
「お前何なんだよ」

俺が言い返す前に、翔が市川を睨みつけた。

「これ以上何か言ったらどうなるかわかってるんだろうな?」
「ほらね、暴力でしか解決できないような人間だよ」

市川は、翔の言葉を嘲笑い、隣にいる友人に共感を求める。

「お前、」
「翔」

今にも手を出しそうな翔に、俺は「やめておけ」と首を振る。

「関わるだけ時間の無駄だ」

ため息をついてから、小さく舌打ちをする。

「あのさあ、この際だからはっきり言うけど」

射るような眼差しを、市川に向ける。

「あれから1年以上経っているのに、まだ引きずってんの? そもそも、俺に怒ること自体、間違ってね?」
「……は?」

何のことだかわからない、とでも言いたそうに、市川は首をかしげる。
けれど、目には少しだけ動揺の色が浮かんでいる。
俺はそれを見逃さなかった。

「ネチネチ過去の恋愛引きずった挙句相手の男を虐めるような奴、実優は好きにならねーよ」
「お前っ!!」
「何? 殴りたいなら殴ればいいじゃん」

胸ぐらを掴んできた市川の手を、右手で強く握る。

「勝手に恨んできて、陰湿な嫌がらせしてきて、俺もお前のこと殴りたいんだよ。一発殴ってくれれば俺も気持ちよく殴り返せるから、殴れよ?」
「ちょっと、やめなよ」

市川の友達が彼の肩をゆする。

「ああ、けどなんだっけ。俺らのこと、『暴力でしか解決できない人間』とかなんとか言ってたっけ。まあ、そもそもお前に殴られたところできっと痛くもかゆくもないけどな」

俺の言葉を否定するように、バシッと右頬が音をたてる。

「……それじゃ、お構いなく」

掴まれていた左手を、これでもかというほど思い切り握る。
痛いのか、市川は眉間に皺を寄せた。
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