夢を叶えた日、一番にきみを想う
「古田が、『もう誰も女子生徒が話しかけてくれない』って泣いてた」
「小竹が来るまでは1番人気だったのにな」

祐樹の英語と数学、そして佑真の英語を担当している古田も、それなりにカッコイイ。
実際、さっき佑真が言っていたように、小竹が来るまでは「この塾で1番カッコイイ」と生徒たちから言われていた。
ただ小竹が来てからは、圧倒的に小竹が人気を集めていて、古田の周りから女子生徒がいなくなっていることは傍からみてもわかった。

「沙帆ちゃんは? 沙帆ちゃんも今日来るの?」
「ああ、来るって」

そう。勉強会に来ようと思ったことにはもう一つ理由があり、それは沙帆ちゃんが「おいでよ」と誘ってくれたからだった。

「物理と化学以外ならきっと教えてあげられるからさ。おいでよ、一緒に勉強しない?」

沙帆ちゃんが勉強を教えてくれるなら勉強会も悪くないかな、と思った俺は、仕方なく参加するつもりだったのに、まんまと行く気にさせられたのだった。

俺の返事に、佑真は「マジ? じゃあ俺、今日沙帆ちゃんに質問しようっと」とニヤッと笑う。

「はあ? お前の担当は古田だろ」
「勉強会は誰に質問しても良いって塾長が言ってた。先生が教室の中を巡回しているから、近くにいる先生に質問するんだって」
「いや、それは知ってるけど」
「まあ、沙帆ちゃんも人気だからな。実際は引っ張りだこで、話せない可能性大きそうだけど」

それでも楽しみだ、と笑う佑真になぜか少しイラついて、俺は聞こえないぐらい小さな音で舌打ちをした。
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