夢を叶えた日、一番にきみを想う
佑真が予想したことは当たって、勉強会が始まるや否や、沙帆ちゃんは常に誰かから質問を受けていた。

沙帆ちゃん、人気だな……。

当たり前か。
教え方は分かりやすいし、分かるまでどれだけ時間がかかっても粘り強く教えてくれるし、いつも笑顔だから聞きやすい。

それに祐樹が前言っていたようにー…沙帆ちゃん、確かに可愛いもんな。

最初に授業を受けた時は容姿について気にしなかったけれど、他の先生と比べると、容姿が整っている。それに加え、地味な先生が多い中、アクセサリーを身につけ清楚な洋服に身を包んでいるからか、存在感が際立っていた。

「わからないところがあったら、いつでも言うんだよ? 他の先生でもいいし、もちろん私でもいいから」

勉強会が始まる前、沙帆ちゃんはわざわざ俺の席までやってきて、笑顔で言ってくれたけれど、これほど人気だと、さすがに声かけづらい。

しかも沙帆ちゃんは、小竹と違って、同性からも大人気だ。
授業前、わざわざ沙帆ちゃんのところへやってきては、恋愛の相談をしたりアイドルの話をしたり、化粧品か何かの話をしたりする女子が何人もいる。

「名城くん?」

英語の課題に取り組むも、結局わからないところが多くてぼんやりと教科書を眺めていると、1人の先生に声をかけられた。

確か、数回、数学を教えてくれたことがある先生だ。名前はー…思い出せなかった。

「大丈夫? さっきからあんまり進んでいないようだけど、わからないところある?」
「いえ、大丈夫です」

即答する。きっとこの人も丁寧に教えてくれるんだろうけど、なんとなく、この人に教わる気分ではなかった。

どうしよっかな。
まあ、明日英語の授業あるし、明日聞くか。

英語の教科書を閉じ、まだ苦手意識が少ない数学の問題集を広げる。
が、正直数学も少し問題を解くと、すぐにわからない問題にぶつかった。

ヤバいな、今回は唯一赤点の取ったことの無い数学でも、赤点を取りそう。
少しだけ生まれてきた焦燥感を原動力にしてペラペラと教科書をめくり、例題が書かれているページを見る。

この例題の解き方はわかるんだけどなあ。どうも、こっちの問題だと……。
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