夢を叶えた日、一番にきみを想う
「俺、確かにきみの彼女に告白したことがあったけれど、それは、彼女なら簡単にヤれそうだなって思ったからだよ」
「は? お前、今なんていった?」
「だから、別にきみの彼女のこと、好きじゃなかったよ。ただヤりたかっただけだから」

気が付けば、手のひらに爪が食い込むほど強く、拳を握っていた。

「ヤれなかったことに未練は感じたけど、別に彼女のこと好きじゃなかったから。誤解は解いておくよ」

こいつ……。
一気に頭に血がのぼる。

拳を振り上げて殴打しようとした時、

「尚樹」

少し離れた場所から、名前を呼ばれた。

――この声は、きっと。

「はあ、もう」

後数センチ、後1秒でも遅かったら目の前の男の頬にあたっていたであろう位置で、俺は殴ろうとしていた手を止める。

小さくため息をついてから名前を呼ばれた方向をみると、沙帆ちゃんと目が合う。

沙帆ちゃんは何も言わない。
ただ俺がいたから名前を呼んだかのように、いつも通り笑っている。

あーあ、もう。
もう、どうでもいいや。

急に殴る気が失せて、

「行くぞ」

後ろにいる祐樹と佑真に声をかけ、市川に背を向ける。

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