夢を叶えた日、一番にきみを想う
「……逃げんのかよ」
「は?」

振り返ると、思わず笑ってしまった。
だって、前と同じように、俺を睨みつけながらも、目には恐怖の色が浮かんでいたから。

「お前さあ、殴られる度胸も無いぐらいなら、最初からケンカ売るなよ」
市川が何か言いたそうにしていることを感じながらも、その場を離れる。
これ以上、こいつの為に時間を使いたくなかった。

それよりも。

「なんでこんなところにいんの?」
「なんでって、勤務が終わったからだよ。今から帰るところ。駅に行く途中でたまたま尚樹の姿見つけたから、声かけちゃった」

チラッと視線を移すと、沙帆ちゃんの隣に小竹もいる。
……なに、この2人、一緒に帰ってんの?

なんとなくその事実が気に入らない。

「尚樹」

沙帆ちゃんは俺と視線を合わせると、ニコッと笑った。

「アイス、買ってあげる」
「……どうして?」

唐突な提案に、思わず聞き返す。

「えー、わからない?」

なんだ?
今日は6月10日。
俺の誕生日ではないし……。なんだ? 今日、何かあったか?

「今日でね」

沙帆ちゃんは、真夏の太陽のように笑う。

「小テスト、10回目の100点だよ。目標に掲げていたでしょ?」
「そっか」

初めて100点を取れた日、沙帆ちゃんは何度も何度も褒めてくれた。
あまりに嬉しそうに褒めてくれるものだから、言ったのだ。

「これからも満点目指すわ。まずは10回、100点取れるように頑張る」って。
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