夢を叶えた日、一番にきみを想う
「まだ勉強していない範囲だもん。出来なくても仕方がないよ」

仕方がないと言えば仕方がないのかもしれない。
けれど、せっかく気合を入れて勉強したのに試験で結果を出せないのはとても悔しかった。

「中学校で習う範囲は夏期講習で徹底的にやるつもりだから、今は気にしなくて大丈夫だよ?」

さっき学習計画表も復習メインで作っておいたよ、と沙帆ちゃんは付け加える。

「でも、また……」

また、同じような思いをするのは嫌だ。
昔勉強をサボった自分が悪い。そんなことわかっているけれど、それでも、この先何度も同じ後悔をするのは嫌だった。

「……もしかして、焦っているの?」

沙帆ちゃんは、真っ直ぐ俺を見る。
その視線は何かを見透かすようで、俺はスッと視線を逸らした。

「尚樹、ここ、座って」

沙帆ちゃんは自分の前の席を指差す。
初めて会った日にも、同じようなことがあったな、と思い出した。

「尚樹。試験は今日で終わりだよね?」

俺が頷くのを見ると、沙帆ちゃんはにこっと笑った。

「今、尚樹は何がしたい?」
「……今?」
「うん。難しいこと考えなくていいよ。試験が終わった今、何がしたい? 友達と遊びたい? 家で好きなアニメが見たい? ゆっくり寝たい? それとも、英語の勉強がしたい?」

俺は今、何がしたいんだろう?
祐樹たちとカラオケがしたい?
気になっていたアニメの続きが見たい?

「……尚樹は、一級建築士になりたいよね」

沙帆ちゃんは俺が答えを出す前に、ゆっくりと口を開いた。
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