夢を叶えた日、一番にきみを想う
「……別に」
「あるんだね」

俺の返事は確かに聞こえたはずなのに、「いいね、ちゃんと夢があるんだね」と先生は笑った。

「……何も言っていないですけど」
「あれ、違った?」
「……」

違ってはいない。
違ってはいないけれど。

「……どうして、そう思うんですか」

どう見たって、何事にもやる気が無さそうな高校生に見えるはずなのに。

「夢がない人は、『ない』っていうから。尚樹くんはあるのかなって思った」

先生は、ふふっと笑う。
あまりにも優しくて、柔らかくて、これほど真っ直ぐな笑顔は見慣れていなくて、思わず目を逸らす。
けれど目を逸らすのが遅かったのか、自分の意に反して、頬が赤くなるのがわかった。

顔を隠すように俺はそっぽを向く。

「行きたい大学はあるの?」
「……まあ、一応」
「教えてくれる?」
「……工業大学」

地元で有名な工業大学の名前を、やけくそ気味に告げる。
無理だと言われるだろう。
この前の三者面談で志望校として言った時、担任は言葉を詰まらせてから、「あの大学の偏差値知ってる?」と尋ねてきたから。

「……いいじゃん!!」

先生は否定するどころか、キラキラと目を輝かせながら、身を乗り出した。

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