たぶんあなたの子です? 認知して下さい!
プロローグ
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若月賢斗邸、表門。
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⋯⋯ インターフォンがなったので、彼は自宅の玄関から外に出た。
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広い庭を回り込んで、しばらく行くと、古い門扉がある。
この家の表門。
材質は鬼胡桃。
そのかんぬきを右にずらし門を開けると、年若い女性が立っていた。
腕に乳児を抱いている。
(誰だ? )
と彼はまず思った。
一瞬でいろいろと頭に浮かべ思い返してみたが、やはり知らんものは知らん、見たこともない人だ。
いったい何の用事?
ご近所のクレームか?
彼女の目には強い怒りと決意が滲んでいた。
見ず知らずにしては、彼女側にははっきりとした経緯があるようだ。
しっかりと視線を合わせてきた。
赤ん坊を連れてきているぐらいだ。クレームにしては随分と根深そうだ、と思わず身構える。
見下ろすぐらいの背丈。
頭の丸みが綺麗に卵型、程よいセミロングの髪が、顔の周りで揺れている。
しかし近所でも見かけたことがない。
広い額に、生え際の髪が綺麗に流れている、そのま髪が耳にかかり、見えている耳の半円が白く陶器のように滑らかに見えた。
大きな目がじっと見ている。
小柄でかなり華奢なのに、その色白な頬は、ふっくらと柔らかそうで可愛らしい。
一度見たら、きっと忘れないだろう、こんな容姿は。
こんな女性は忘れはしない、と彼は思った。
無言で彼女を見下ろしていたら、彼女の方は唇を噛んで見上げてくる。
その強い感情は覚えもなく、そんな表情をされるようなはずがないのに⋯⋯ 。
彼女は顔色ひとつ変えない彼に、もどかしそうに、
「あなたの子です」
と言った。
「は? 」
と彼は冷たく返すぐらいしか出来なかった。
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