たぶんあなたの子です? 認知して下さい!
︎✴︎


秀斗の仕事は弁護士だそうだ。

朝。
弁護士バッジをつけて、ビシッと髪を整えて事務所に車で出勤していく。
長身のスラリとした彼がスーツを着ると、ため息が出るほど素敵だった。

隣の邸宅はどうなっているのか、と少し気になる。お手伝いさんが週に2回ほど掃除をしに行く。

一人暮らしだと秀斗が言ったが、確かに人気(ひとけ)もなく、彼は寝て着替えているだけのようだった。

夕方。
シャッターの音がする。開ける音。
それからエンジンの音。
バタン、と車の扉の音がして後部座席から鞄を下ろしているようで、また、バタンと閉める音。
シャッターを閉める音。

もうすぐ秀斗はこちらに来るだろう。
帰宅すると、秀斗はすぐネクタイを右手で緩めながら、向こうの家には行かずに、こちらの屋敷に直行する。
手を洗って、まず賢次の顔を見にくる。

淡々と穏やかで、秀斗は思いやりのある人だ。


「今日はどうだった? 何か困らなかったか? 」


と毎日、帰宅するなり聞いてくれた。


「えっと、そう、賢次がうつ伏せで頭を上げられるようになってきたんです! 」


と報告。
赤ん坊の成長は目を見張るほど早い。
お手伝いさんも、子どもと孫を育てた経験があり、とても頼りになる存在だ。
懸命に世話をしていれば、たった1週間ほどでも随分と違ってくる。

秀斗は、話を聞いてから賢次の成長の様子をすぐ確かめ「本当だ! 」と喜んでくれた。

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