たぶんあなたの子です? 認知して下さい!
︎✴︎
2週間もすぎた頃。
「電話してみたんだ」
と秀斗が言った。
「おそらく、連絡があるんじゃないかと思う」
秀斗は、届け物を預かっていると賢斗の会社に電話をしてみたらしい。
「嘘はついていない、と思う」
と真面目な口調で言う。
ギリギリ真実。
届け物、賢次⋯⋯ 。
〈連絡先にかかれた電話番号にかけてみた〉と。家に連絡するよう伝言をしたらしい。
なんとなく2人でため息をついた。
もうすぐ、連絡があれば、終わる、
秀斗といられなくなる⋯⋯ 。
✴︎
やっと寝た賢次の掛布を整えた。
小さな口をぷくぷくさせながら、よく眠っている。
「不思議だな。賢次は何だか確かに兄に似てる。眉やほら、このあたり、」
夕食を終えて広い座敷。
秀斗は帰宅したまま、まだここにいる。
彼に言われて赤ちゃんを見たら、それこそ不思議。
なんだかこの人にも似てる気がする。
甥なんだな、血が繋がってるからね。
「鑑定などしなくても、分かるのかもしれない」
とポツリと言う。
それから顔を上げて、彼女の顔を黙ってしばらくじっと見た。
「おでこの形は君に似てる」
「⋯⋯ 」
確かに、血のつながりを感じる。私達の家族の系統の形かな⋯⋯ と思った。とくに、この額の広さとかこめかみとか⋯⋯ 。
賢次を2人で覗き込んで顔が間近、気がついたら髪と髪が触れるぐらいだった。
「君は男のどんなところに惹かれるの? 」
「誠実さでしょうか、責任感、頼り甲斐? 」
「どうして? 」
「両親が離婚して、父がかなり無責任な人だったから⋯⋯ 」
「賢斗は誠実? 」
「⋯⋯ 」
「責任感がある? 」
「⋯⋯ 」
「頼り甲斐がある? 」
「⋯⋯ 」
静かに聞かれて、それはあなた、秀斗さんだわ、と思った。
誠実で、責任感があって、頼り甲斐があって、
「優しい」
と呟いたら、もっと顔が近づいていた。
そっと。
分からないぐらいに軽く。
唇に、彼の唇が触れた。
キス。
「はじめてなのに、」と思わずつぶやいた声は、秀斗には届かなかったようだった。
ただ2回目のキスが深まっただけだった。
所有を刻むように、彼の右手で頭を簡単に押さえられて、深く深く口づけられる。嵐みたいに、もう体を保ってられない、くたりと彼に体を預けて酔いしれてしまう。
2人の間で賢次がスヤスヤ寝ている。
「話してよ」
と秀斗が囁いた。
「⋯⋯ 」
言おうか、と心が揺れる。
頼ってしまおうか、このまま。
助けてって。
言葉が口元まで出かかる。
涙も出そうになる。
この人はきっとどうにかしようとしてくれてしまう。
必死で言葉を飲み込んだ。
だから言いたくない。
言っちゃダメだ。
この人の性格を分かって、利用するみたいに優しさに付け込むような自分になりたくない。
憐れに思われて、呆れられて、同情で助けられたくなんてない。
責任を負うのは賢斗さん。
秀斗さんじゃない。
賢斗さんとケジメをつけなきゃいけないんだ。
秀斗さんの胸に顔を埋めて、あたたかい、
安心して守られて、このままずっとここにいられたら、と苦しくなった
2週間もすぎた頃。
「電話してみたんだ」
と秀斗が言った。
「おそらく、連絡があるんじゃないかと思う」
秀斗は、届け物を預かっていると賢斗の会社に電話をしてみたらしい。
「嘘はついていない、と思う」
と真面目な口調で言う。
ギリギリ真実。
届け物、賢次⋯⋯ 。
〈連絡先にかかれた電話番号にかけてみた〉と。家に連絡するよう伝言をしたらしい。
なんとなく2人でため息をついた。
もうすぐ、連絡があれば、終わる、
秀斗といられなくなる⋯⋯ 。
✴︎
やっと寝た賢次の掛布を整えた。
小さな口をぷくぷくさせながら、よく眠っている。
「不思議だな。賢次は何だか確かに兄に似てる。眉やほら、このあたり、」
夕食を終えて広い座敷。
秀斗は帰宅したまま、まだここにいる。
彼に言われて赤ちゃんを見たら、それこそ不思議。
なんだかこの人にも似てる気がする。
甥なんだな、血が繋がってるからね。
「鑑定などしなくても、分かるのかもしれない」
とポツリと言う。
それから顔を上げて、彼女の顔を黙ってしばらくじっと見た。
「おでこの形は君に似てる」
「⋯⋯ 」
確かに、血のつながりを感じる。私達の家族の系統の形かな⋯⋯ と思った。とくに、この額の広さとかこめかみとか⋯⋯ 。
賢次を2人で覗き込んで顔が間近、気がついたら髪と髪が触れるぐらいだった。
「君は男のどんなところに惹かれるの? 」
「誠実さでしょうか、責任感、頼り甲斐? 」
「どうして? 」
「両親が離婚して、父がかなり無責任な人だったから⋯⋯ 」
「賢斗は誠実? 」
「⋯⋯ 」
「責任感がある? 」
「⋯⋯ 」
「頼り甲斐がある? 」
「⋯⋯ 」
静かに聞かれて、それはあなた、秀斗さんだわ、と思った。
誠実で、責任感があって、頼り甲斐があって、
「優しい」
と呟いたら、もっと顔が近づいていた。
そっと。
分からないぐらいに軽く。
唇に、彼の唇が触れた。
キス。
「はじめてなのに、」と思わずつぶやいた声は、秀斗には届かなかったようだった。
ただ2回目のキスが深まっただけだった。
所有を刻むように、彼の右手で頭を簡単に押さえられて、深く深く口づけられる。嵐みたいに、もう体を保ってられない、くたりと彼に体を預けて酔いしれてしまう。
2人の間で賢次がスヤスヤ寝ている。
「話してよ」
と秀斗が囁いた。
「⋯⋯ 」
言おうか、と心が揺れる。
頼ってしまおうか、このまま。
助けてって。
言葉が口元まで出かかる。
涙も出そうになる。
この人はきっとどうにかしようとしてくれてしまう。
必死で言葉を飲み込んだ。
だから言いたくない。
言っちゃダメだ。
この人の性格を分かって、利用するみたいに優しさに付け込むような自分になりたくない。
憐れに思われて、呆れられて、同情で助けられたくなんてない。
責任を負うのは賢斗さん。
秀斗さんじゃない。
賢斗さんとケジメをつけなきゃいけないんだ。
秀斗さんの胸に顔を埋めて、あたたかい、
安心して守られて、このままずっとここにいられたら、と苦しくなった