たぶんあなたの子です? 認知して下さい!
4、父親の賢斗、帰宅
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翌朝。
あの後、眠ってしまった。
目が覚めたら古いガラスの引き戸から、朝日が差し込み、広い畳に敷いた布団と、他に何もない和室。
秀斗の姿はない。


✴︎


どんな顔をして、とか、どう話して、とか思っていたが、どれも外れた。

起きたら兄の賢斗がいきなり帰ってきていたのだ。

襖を閉めて、廊下側の、台所側の襖も閉まっていて、そのあたりから声がしていた。

襖の向こうのほうから呼ばれて、洋室に急いで移動して、しばらく身支度をしていたら、その部屋で寝ていた賢次が泣いたので、おしめをかえて腕に抱いた。


「お父さんが来たみたいよ、ほんとに」


賢次にそう呟いて、泣きそうになりながら立ち上がる。

賢次を抱いて台所脇の六畳間に入れば、“賢斗”らしき男性が面やつれしてしまった姿で座っていた。
秀斗は、愛しい彼は、無言で台所の流しにもたれて立っていた。
兄の賢斗は顔の造作の綺麗さだけが似ているような、全く弟の秀斗と違った背格好と雰囲気の男性だった。

賢斗は彼女の姿を見るなり、


「誰だ? 」


と驚いたようにすぐに言った。


「ゆり⁈ 違う! 顔だけはそっくりだが、だれなんだ⁈ 」


と真っ青になった。


「双子の妹です」


と言ったら、賢斗も秀斗も驚いたように顔を上げた。


「ゆりさんの? 」


と、賢斗が呆然と呟く。


「この子、あなたと姉の子です」

「子ども⋯⋯  」

「思い当たりがないはずはない、1人では子供は作れない! 出来ないでしょう? 必ず父親がいるはずです! 」

「僕の子⋯⋯  」


あぁ、と賢斗の目から涙が次々とあふれ、我が子の賢次を震える指で撫でた。
その涙でわかった
彼は妊娠も知らなかった。
ただ愛する人と別れて傷ついていただけだった。


「僕の子⋯⋯  」


と息を吐くように言った。


「ゆりは? 」

「入院しているんです」

「何で⋯⋯ ? 」


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