たぶんあなたの子です? 認知して下さい!
1、彼女は若月家、門の前
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⋯⋯ 彼女は探していた家の門の前に立っていた。


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(まさか、この家? )

と彼女は思った。
すごく立派な門構えの屋敷だった。

信号を渡り、2本目の道から始まる塀。
この家だったりして、なんてね。
どこまで続くのかと何となく目で追ってしまうような大きなお屋敷。

電柱の番地を見たら、本当に⋯⋯ 間違いない、この家みたいだ⋯⋯ 。

塀からは電線より高い木の緑が揺れている。
もう今時は庭には絶対植えないという桜の古木が、塀を押すように大きく枝を広げていた。
柘榴だろうか、塀の上に頭が見えているこの木も、かなりの老木だ。

長く続く塀の中は木で覆い隠され、建物は平家の瓦屋根がチラリと見えるぐらいで、中の様子はわからない。

塀を曲がって、やっと門とインターフォンを見つける。かなり古いタイプの、カメラなど付いていないものだった。
古い屋敷らしく門扉は木製、その上には新しく泥棒よけの鉄柵が綺麗に付けてあり、それは高い塀の上にさらに高く巡らせてあった。

大きな屋敷に気後れがして、しばらく眺めていた、と、腕の中の生き物がごにょごにょと動いた。

両腕はその生き物を抱いているので塞がっている。小さな命。

(あなたもお父さんに会えるのがわかるの? )

と囁くように語りかけた。

腕の中の生き物、生後3ヶ月の赤ちゃん、男の子、名前はけんじ。

賢次。

お父さん賢斗さんの子って意味。

顔を上げて、表札をしっかりと凝視する。
『若月賢斗』
やはりこの家に間違いない。

この立派な広い広いお屋敷で間違いない。

女性は意を決して、赤ん坊を左手だけで抱え直し、右手でその家のインターフォンに手を伸ばした。

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