*夜桜の約束* ―春―
「それはお前だって一緒だろ? 人手があればそれだけ早く帰ってこられるんだ。明日の公演後はともかく、今夜は短時間で済ませるべきだ」

「それはそうだけど……」

「だってモモちゃんは、私達のモモちゃんでしょ? まぁ……凪徒君だけのモモちゃんだって言うなら、ここは遠慮しても構わないけれど?」

 暮の隣に立つ鈴原夫人も同調して、冗談混じりに困惑の凪徒を説き伏せた。

「ばっ……変なこと言わないでくれよ、夫人!」

「じゃあ、凪徒君の了解は要らないでしょ? これは『協力』じゃなくて『一致』なのよ。全員が全員、今出来ることをやりたいの」

「……」

 凪徒は何も言えなくなった。

 確かにモモは『皆』の仲間であって、自分は皆の想いにどうこう言える立場ではない。

 けれど──自分の思いついた方法は数パーセントの可能性もあるかないかの賭けだ。

 それを皆に()いて良いものか迷っていた。


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