*夜桜の約束* ―春―
しばらく進んだ先に内陸へ入る小道が現れ、運転手はそちらへ右折した。
小道は紳士が『丘』と言った通り坂を登っており、幾つかのくねるカーブを越えた後、やがて海の見える丘に辿り着いた。
「ここは……」
「そう。明日葉の眠る墓地だよ」
駐車場に停められた車から降り、石畳の通路を進む高岡に続く。
左右には濃いグレーの墓石が海に向けられて陳列し、それはかなり遠くまで並んでいた。
墓石は良く寺院で見られるような縦長の直方体ではなく、どちらかと言えば幅広でプレート状のシンプルな物が多い。
路の途切れた一番海に近い最前列を右に折れて、三番目に明日葉と妻らしき名前が見つけられた。
「お花、買ってくれば良かったですね」
「そうだね。でもこんな時間だったから」
車内に常備しているのだろう、高岡は運転手から渡された線香に火を点け、半分をモモに手渡した。
二人は線香台に線香を寝かせて置き、しゃがみ込んで手を合わせ、少しの間目を閉じた。
モモは高岡の病を癒してくれるようにお願いしたが、父親である彼は娘に何を祈ったのだろうか。
小道は紳士が『丘』と言った通り坂を登っており、幾つかのくねるカーブを越えた後、やがて海の見える丘に辿り着いた。
「ここは……」
「そう。明日葉の眠る墓地だよ」
駐車場に停められた車から降り、石畳の通路を進む高岡に続く。
左右には濃いグレーの墓石が海に向けられて陳列し、それはかなり遠くまで並んでいた。
墓石は良く寺院で見られるような縦長の直方体ではなく、どちらかと言えば幅広でプレート状のシンプルな物が多い。
路の途切れた一番海に近い最前列を右に折れて、三番目に明日葉と妻らしき名前が見つけられた。
「お花、買ってくれば良かったですね」
「そうだね。でもこんな時間だったから」
車内に常備しているのだろう、高岡は運転手から渡された線香に火を点け、半分をモモに手渡した。
二人は線香台に線香を寝かせて置き、しゃがみ込んで手を合わせ、少しの間目を閉じた。
モモは高岡の病を癒してくれるようにお願いしたが、父親である彼は娘に何を祈ったのだろうか。