*夜桜の約束* ―春―
[5]目標と決断
──やっぱり……すごいなぁ……。
モモは客席の片隅で、凪徒と夫人の練習を独り見上げていた。
凪徒の技量は今更言わなくてもというほどのレベルだが、こうして改めてお客としての位置から眺めたら、そのしなやかさはきっと誰も太刀打ち出来ないと思った。
夫人でさえ同じだ。
彼女が引退を決めたからこそ異例の募集が掛かり、モモはこの場所にいられる訳だが、今でさえ惜しむ声が絶えないのは納得出来る。
引き締められた肢体。
伸ばされた両脚はどんなに揺らされても乱れることはなく、差し出された腕もきっちり目指す場所を掴み、その後取るべき行動に余念がない。
──あたし……少しでもあの位置に近付けているんだろうか?
幾らキャリアの長さが違うとはいえ、花形として演じているのだ。
夫人との違いは誰もが理解してくれる訳ではない。
このサーカスの名を汚すようであってはならない。
モモは客席の片隅で、凪徒と夫人の練習を独り見上げていた。
凪徒の技量は今更言わなくてもというほどのレベルだが、こうして改めてお客としての位置から眺めたら、そのしなやかさはきっと誰も太刀打ち出来ないと思った。
夫人でさえ同じだ。
彼女が引退を決めたからこそ異例の募集が掛かり、モモはこの場所にいられる訳だが、今でさえ惜しむ声が絶えないのは納得出来る。
引き締められた肢体。
伸ばされた両脚はどんなに揺らされても乱れることはなく、差し出された腕もきっちり目指す場所を掴み、その後取るべき行動に余念がない。
──あたし……少しでもあの位置に近付けているんだろうか?
幾らキャリアの長さが違うとはいえ、花形として演じているのだ。
夫人との違いは誰もが理解してくれる訳ではない。
このサーカスの名を汚すようであってはならない。