*夜桜の約束* ―春―
「モモしゃま、元気がありましぇんな?」

 余りに息の合った二人の演舞にモモは口を開いたまま魅入っていたが、その瞳が揺らいでいたことを、端を通り過ぎようとした暮ピエロは見逃さなかった。

 もちろん本来なら喋らずにおどけてみせるところなのだが、少女が落ち込んでいることは感じ取れ、刹那に脳天から出したようなソプラノの声をかけていた。

「く、暮さん……元気はありますよー。出られないのは残念ですけど」

 隣に座り込んだヒラヒラ衣裳の赤玉鼻に慌てて目を移す。

 ずっと上空を凝視していたせいか、そのカラフルな視界にチカチカしたのか、しばらく目を瞬かせた。

「無理すんなよーモモ。今出来る範囲で頑張っていればいいんだ。背伸びなんかしなくていい」

 そう言って真っ青な星に縁取られた細い目がウィンクをしてみせた。

 ──無理……先輩と同じアドバイス。あたし……そんなに無理してる?


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