*夜桜の約束* ―春―
夫人が支柱のてっぺんで再びの挨拶を見せると、左の支柱にもスポットライトが浴びせられた。
同じポーズを決めた凪徒の姿が現れた途端、客席のそこかしこから黄色い歓声が上がった。
モモがパートナーである時と変わらず、始まり繰り返される演舞。
観客もいつもと同じように二人の技に魅了され、客席から立ち上がりそうなほどの興奮が視線をブランコに釘付けにした。
隠れた幕の隙間から覗くモモですら、そのショーの素晴らしさに魂を抜かれそうな気分だった。
そんな夢見心地からつと自分の置かれた状況を思い出し、夢中で仰ぎ見る客席の様子に目を見張った。
今のところ特に何の変化も見えない……と思ったが──
「えっ?」
少し幕を引いて身を乗り出さないと見えない右端に、何か光る物を手に持った男性の姿が垣間見られた。
光ったのは一瞬だった。実際は黒々として少し長い棒状の物。
その片側を握り締め、反対の端は凪徒が常に着地する支柱の足場に定められていた。
「あっ……!」
周りの誰もが上を見上げているため、その男の不可解な行動は気付かれていなかった。
モモは言葉を洩らすと同時に幕の一番端へ走り寄り、気付けば客席の通路を駆け上がっていた。
──!!
大歓声の中、空気を斬り裂く鋭い音が響いた──。
同じポーズを決めた凪徒の姿が現れた途端、客席のそこかしこから黄色い歓声が上がった。
モモがパートナーである時と変わらず、始まり繰り返される演舞。
観客もいつもと同じように二人の技に魅了され、客席から立ち上がりそうなほどの興奮が視線をブランコに釘付けにした。
隠れた幕の隙間から覗くモモですら、そのショーの素晴らしさに魂を抜かれそうな気分だった。
そんな夢見心地からつと自分の置かれた状況を思い出し、夢中で仰ぎ見る客席の様子に目を見張った。
今のところ特に何の変化も見えない……と思ったが──
「えっ?」
少し幕を引いて身を乗り出さないと見えない右端に、何か光る物を手に持った男性の姿が垣間見られた。
光ったのは一瞬だった。実際は黒々として少し長い棒状の物。
その片側を握り締め、反対の端は凪徒が常に着地する支柱の足場に定められていた。
「あっ……!」
周りの誰もが上を見上げているため、その男の不可解な行動は気付かれていなかった。
モモは言葉を洩らすと同時に幕の一番端へ走り寄り、気付けば客席の通路を駆け上がっていた。
──!!
大歓声の中、空気を斬り裂く鋭い音が響いた──。