*夜桜の約束* ―春―
[10]天使と悪魔
二杯目の茶で喉を潤す。既に外は真っ暗闇だった。
組織だか機関だか知らないが、モモはそこで無事に過ごしているのだろうか。
そんなことを思いながら窓の外の星空を見上げて、凪徒は再び団長の姿を目に入れた。
「で……そのナントカって奴はどこに在るんです?」
「さてな。何しろ国家機密だから」
団長の飄々とした答えが、凪徒のこめかみに力を込めさせた。
「そんないいかげんな話、信じられる訳ないでしょうが! どうして団長は平気なんですっ」
「まぁ……知り合いの知り合いの知り合いくらいだからの」
そこまで行ったらもはや他人だ。と、凪徒は腹の煮えくり返るのを何とか収め、平静を取り戻すために大きく息を吐いた。
「もちろんモモは丁重に扱われ、テストを終えた後、不合格なら四日後ここへ戻される。が……合格すればいずことも分からない養成所に送り込まれ──」
「団長はモモを手放してもいいって言うんですか!?」
「──お国のためだろ?」
「個人を犠牲にして、何が国家だっ」
ギリギリと奥歯を噛み締めた凪徒の背中は徐々に丸まり、怒りの我慢も限界に近付いていた。
組織だか機関だか知らないが、モモはそこで無事に過ごしているのだろうか。
そんなことを思いながら窓の外の星空を見上げて、凪徒は再び団長の姿を目に入れた。
「で……そのナントカって奴はどこに在るんです?」
「さてな。何しろ国家機密だから」
団長の飄々とした答えが、凪徒のこめかみに力を込めさせた。
「そんないいかげんな話、信じられる訳ないでしょうが! どうして団長は平気なんですっ」
「まぁ……知り合いの知り合いの知り合いくらいだからの」
そこまで行ったらもはや他人だ。と、凪徒は腹の煮えくり返るのを何とか収め、平静を取り戻すために大きく息を吐いた。
「もちろんモモは丁重に扱われ、テストを終えた後、不合格なら四日後ここへ戻される。が……合格すればいずことも分からない養成所に送り込まれ──」
「団長はモモを手放してもいいって言うんですか!?」
「──お国のためだろ?」
「個人を犠牲にして、何が国家だっ」
ギリギリと奥歯を噛み締めた凪徒の背中は徐々に丸まり、怒りの我慢も限界に近付いていた。