*夜桜の約束* ―春―
 ──もう一度見てやるか? 独りニヤリとして再び画面を開いたが、

「あ……電源切れた」

 次の瞬間には何も映し出されない液晶パネルがそこにあった。

「凪徒さん……何を独りでブツブツ呟いてるんです?」

「わぁっ!!」

 掲げた携帯の向こう側に秀成の小首を傾げた姿が映り、凪徒は慌てて布団の下に隠していた。

「何だよっ、いるなら声かけろ!」

「だから、声かけたんですって……」

 困ったように苦笑いの秀成は、驚きずれ落ちる眼鏡を元に戻した。

「そろそろ次の準備が始まりますよ? 僕の方も用意は整いました。これからNシステムに侵入してみます」

「エヌ……? 侵入?」

 起き上がった凪徒も首をひねりながら、秀成の自信満々の声に疑問の声を投げた。

 ──侵入って、何だか物騒じゃないか?

「通称『Nシステム』──自動車ナンバー自動読取装置のことですよ。そこにハッキングを掛ければ、すぐにモモがどこのどいつに(さら)われたのかが分かるって寸法です」

「ハッキング!?」

 ──それってもはや犯罪じゃないか……?


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