*夜桜の約束* ―春―
[16]名庭と鉄棒
「お花が綺麗でございますね。お、おっ、おっ……おと、お父……さ、ま……」
モモは陽だまりの集まった広大な英国式庭園の中を、高岡紳士を横にしてゆっくりと散策していた。
「そんなに無理はしなくていいよ、明日葉。まぁ、こちらは勝手に明日葉と呼ぶけれど」
「はぁ……すみません」
とりあえず約束の交わされた本日限りの父娘ごっこのため、まずは明日葉が高岡を呼んでいたように努力してみたが、どうしても流暢には呼びかけられなかった。
「何も「お父様」と呼ぶ必要はないんだ。君はご自分のお父上をどう呼んでいるんだい? それと同じで構わないよ」
「……」
モモはその言葉に一瞬彼の優しい面を見上げてみたが、すぐに正面に戻し、進める足先を見下ろした。
モモは陽だまりの集まった広大な英国式庭園の中を、高岡紳士を横にしてゆっくりと散策していた。
「そんなに無理はしなくていいよ、明日葉。まぁ、こちらは勝手に明日葉と呼ぶけれど」
「はぁ……すみません」
とりあえず約束の交わされた本日限りの父娘ごっこのため、まずは明日葉が高岡を呼んでいたように努力してみたが、どうしても流暢には呼びかけられなかった。
「何も「お父様」と呼ぶ必要はないんだ。君はご自分のお父上をどう呼んでいるんだい? それと同じで構わないよ」
「……」
モモはその言葉に一瞬彼の優しい面を見上げてみたが、すぐに正面に戻し、進める足先を見下ろした。