*夜桜の約束* ―春―
[22]マフィンと決意
翌朝、春霞といった様子の靄が立ち込める冷たい空気の中、凪徒は団長室へ向かっていた。
彼が目覚めた時、既に秀成はパソコンの横に突っ伏していた。
その肩に上着を掛けてやり、起こさないようにと静かに外へ出た。
さすがに二晩も血眼になって画面に張り付いていれば、途中で落ちてしまうのも無理はない。
「団長、起きていますか?」
凪徒はガラス戸の外側から小さく声をかけたが、ややあって真ん丸の影が近寄り、その扉を開いた。
「おはようございます、団長」
「おはよ。随分早いの、何時だ?」
パジャマ姿がカーテンを寄せて、まだ眩しいとは言えない朝の薄明かりが暗い部屋に射し込まれる。
「すみません……起こしちゃいましたか?」
凪徒の言葉には既に鋭いものは消えていた。
「いや……着替えるから、ちょっと待っとれ」
と、奥に立てられたパーテーションの陰でモソモソと音を立て、しばらくして普段着の団長が現れた。
テーブルに置かれたオジサン臭いセカンドバッグを手に取り、扉の傍らに立つ凪徒に一つ目配せする。
「団長?」
「腹が減っては戦は出来んぞ? ハンバーガーでも食べに行くか?」
──説教は戦なのか?
そう苦笑する面を履物に手を伸ばす団長の背に向けて、凪徒は無言で頷きその後ろに続いた。
☆ ☆ ☆
彼が目覚めた時、既に秀成はパソコンの横に突っ伏していた。
その肩に上着を掛けてやり、起こさないようにと静かに外へ出た。
さすがに二晩も血眼になって画面に張り付いていれば、途中で落ちてしまうのも無理はない。
「団長、起きていますか?」
凪徒はガラス戸の外側から小さく声をかけたが、ややあって真ん丸の影が近寄り、その扉を開いた。
「おはようございます、団長」
「おはよ。随分早いの、何時だ?」
パジャマ姿がカーテンを寄せて、まだ眩しいとは言えない朝の薄明かりが暗い部屋に射し込まれる。
「すみません……起こしちゃいましたか?」
凪徒の言葉には既に鋭いものは消えていた。
「いや……着替えるから、ちょっと待っとれ」
と、奥に立てられたパーテーションの陰でモソモソと音を立て、しばらくして普段着の団長が現れた。
テーブルに置かれたオジサン臭いセカンドバッグを手に取り、扉の傍らに立つ凪徒に一つ目配せする。
「団長?」
「腹が減っては戦は出来んぞ? ハンバーガーでも食べに行くか?」
──説教は戦なのか?
そう苦笑する面を履物に手を伸ばす団長の背に向けて、凪徒は無言で頷きその後ろに続いた。
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