*夜桜の約束* ―春―
「何なんだろうな……コレ」
車内で今一度画面を覗く。道路を走行する車を映し出した画像は、明らかに異様だった。
通常であれば走行車のナンバープレートがハッキリと確認出来る筈であるのに、その部分はまるで太いペンで塗りつぶされたように何も読み取ることが出来ない。
車体も色や形が殆ど分からないほど加工されていて、車内は全て黒塗りになっていた。
「他にもあるのか?」
「はい……数地点調べてみたんですが同じです。それも明らかに無関係な軽自動車やトラックまで塗られていて、どれが目的の車なのか分からないようにカモフラージュされています」
「ふ……ん」
マフィンを口に運びながら説明する秀成の横で、凪徒は考え込んでしまった。
が、それも十数秒ほどの虚空を漂い、
「こんな手間、広範囲でやれる訳もないだろうから、邪魔されている地点がどこまでなのか、午後の公演終了までに調べられるか?」
「え? ええ……出来ると思います」
「その地域を辿って、一番遠い所からとりあえず探し出す。車種と色は分かってるんだ。手当たり次第当たってみるよ」
凪徒は練習着に着替え、テントへ向かおうと扉に手を掛けた。
「な、凪徒さんっ、そんな地面のケシ粒探すようなこと……っ!」
「でも今はそれしか方法がないんだ。やれるだけやってみるさ」
振り向いて困惑する秀成に見せた笑顔は、珍しく晴れ晴れとしていた。
──そしてその頃、高岡邸のモモは──
「先輩……きっと怒ってるだろうなぁ……」
昇る朝陽を眺めながら、独り鉄棒にぶら下がっていた──。
車内で今一度画面を覗く。道路を走行する車を映し出した画像は、明らかに異様だった。
通常であれば走行車のナンバープレートがハッキリと確認出来る筈であるのに、その部分はまるで太いペンで塗りつぶされたように何も読み取ることが出来ない。
車体も色や形が殆ど分からないほど加工されていて、車内は全て黒塗りになっていた。
「他にもあるのか?」
「はい……数地点調べてみたんですが同じです。それも明らかに無関係な軽自動車やトラックまで塗られていて、どれが目的の車なのか分からないようにカモフラージュされています」
「ふ……ん」
マフィンを口に運びながら説明する秀成の横で、凪徒は考え込んでしまった。
が、それも十数秒ほどの虚空を漂い、
「こんな手間、広範囲でやれる訳もないだろうから、邪魔されている地点がどこまでなのか、午後の公演終了までに調べられるか?」
「え? ええ……出来ると思います」
「その地域を辿って、一番遠い所からとりあえず探し出す。車種と色は分かってるんだ。手当たり次第当たってみるよ」
凪徒は練習着に着替え、テントへ向かおうと扉に手を掛けた。
「な、凪徒さんっ、そんな地面のケシ粒探すようなこと……っ!」
「でも今はそれしか方法がないんだ。やれるだけやってみるさ」
振り向いて困惑する秀成に見せた笑顔は、珍しく晴れ晴れとしていた。
──そしてその頃、高岡邸のモモは──
「先輩……きっと怒ってるだろうなぁ……」
昇る朝陽を眺めながら、独り鉄棒にぶら下がっていた──。