我が身可愛い大人たち
美鳥はふるふると首を左右に振る。そして和真の手を取ると、言い聞かせるように告げる。
『いいえ、カッコよかったです』
『え……?』
『それに、私を助けるための嘘だとしても、嬉しかったです。さっきの』
『あぁ……っ、ええと、あれは』
言い訳を探すように視線を泳がせる和真。そのうち観念して美鳥をまっすぐに見つめると、遠慮がちに言った。
『嘘じゃない、です』
『えっ?』
『実は、ひと目惚れで……。あの時はジムに通う理由を〝男らしい筋肉を付けたくて〟って説明しましたけど、すぐに〝美鳥さんに会いたいから〟に変わりました。今では〝美鳥さんを守れる男になりたい〟とも思ってて』
包み隠さず自分の気持ちを告白する和真に、美鳥はときめきを覚えずにはいられなかった。
この人をもっと知りたい。自然な欲求に突き動かされるようにして、彼に尋ねる。
『助けていただいたお礼に、これからお食事どうですか?』
『えっ……。はい! ぜひ!』
和真は少年のように弾ける笑顔で答え、その素直な反応を美鳥も好ましく思った。