我が身可愛い大人たち
ふたりはその日をきっかけに交際をスタートさせ、恋人として楽しい時間を重ねていった。
土日休みの和真と平日休みの美鳥とでは休日が合わないのが難点で、それを解消するため、ふたりは交際三カ月のスピード結婚に踏み切る。
結婚後、毎日顔を会わせられることは単純にうれしく、最初の内は幸福だった。
しかし、一緒に暮らしていて生活リズムが違うという状況は、また新たなストレスを生むこととなった。
『美鳥……しよ?』
『ごめん、今日疲れてて』
『じゃ、明日は?』
『ごめん、急遽遅番になったから、夜家にいないんだ』
『……そう』
こんな会話を何度繰り返しただろう。寂しそうな和真に美鳥も気づいていたが、見て見ぬふりをして二年半が過ぎた。その間に係長から課長へ昇進した和真は忙しくなり、ジムを退会してしまった。
結婚したのだから、セックスなんていつでもできる。そう思っているうちに、夫婦生活は睡眠や食事よりも優先順位が下がっていった。
和真から誘われなくなった時期も、はっきり思い出せない。生活自体は平穏だが、うまくいっているとは言い難い。
その上どうやら和真は浮気をしている。