我が身可愛い大人たち

「いいかげん離婚した方がいいのかな……」

 美鳥は運転しながら、ぽつりと呟く。自分が第三者で、俯瞰から夫婦の現状を見たら『さっさと離婚しろ』というだろう。

 けれどそうできないのは、和真を心から愛し、この人と結婚したいと思っていた頃の感情を心がまだ覚えているからだ。

「とにかく明日、ちゃんと話し合おう」

 明日、四月十五日は、美鳥の三十一歳の誕生日。平日だが美鳥は休みで、和真にもどうしても時間を作ってほしいと頼み込み、夜に食事の約束をしている。

 二カ月前のバレンタインにも食事の約束をしてすっぽかされた記憶があるが、誕生日はさすがに空けてくれると信じている。

 考えているうちに職場のジムに併設した立体駐車場が近づいてきて、美鳥は気持ちを切り替える。

 駐車場に車を停めて後部座席から荷物を取り出す途中、自然と真っ赤なショーツが目に入り気が重くなりかけたが、頭を振ってなんとか思考から追い出した。

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