我が身可愛い大人たち
初恋夢想
雅巳と美鳥は、中学と高校の同級生、そして同じバスケットボール部の部員とマネージャーという関係だった。
すらりとした体形で美人、加えて面倒見の良い性格の美鳥は部内でも人気の存在で、部室の裏などに呼び出されてよく告白されていた。
その中で彼女が誰を選び付き合うのか、男子部員たちはいつも予想し合っていた。
『どうせキャプテンだろ。見た目いいし、名門大のバスケ部からも声かかってるスター選手だ』
『だなー、悔しいけどお似合いだ』
『キャプテン、梓沢のはちみつレモン食い放題か、うらやましい』
『馬鹿、彼氏ならもっと手の込んだもん作ってもらえるだろうよ』
雅巳や美鳥が高校二年の頃の、部員たちの会話である。彼らは見目麗しいバスケ部のキャプテンが美鳥の相手と決めつけ、勝手に羨んではため息をこぼした。
会話には加わらないものの雅巳もそのうちのひとりで、明るく元気で気遣いのできる美鳥に密かに想いを寄せていた。
彼女の作るはちみつレモンを食べるたび、酸っぱさに口の中がきゅっと縮むのと同じくらい、心臓が締めつけられて苦しかった。