我が身可愛い大人たち
「俺は直江雅巳……っておい、きみ、なにを……!」
びくりと体を震わせた彼を絵里奈は「かわいい」と笑って、まだやわらかなその部分をつついてみたり、キスをしたり。
雅巳はわけがわからず拒もうとしたが、昨夜の酒が抜けきっていない体がいうことをきかない。絵里奈に与えられる刺激が、彼の理性を奪い去る。
「あ、く……っ」
「梓沢さんに口でしてもらってるって、想像していいよ?」
絵里奈の言いなりになる必要などないのに、雅巳の脳裏には美鳥が浮かぶ。
美鳥がこんなことをしてくれるはずがないのに。そうであったらいいと、都合のいい妄想が彼を支配する。
「梓沢……っ」
雅巳は妄想と現実の境を見失い、快楽に身を委ねる。やがて生理的にやってきた射精感に勝てず、絵里奈の口の中いっぱいに、自身の欲を吐き出した。
少しも躊躇せずにそれを飲み下した絵里奈は、「交渉成立だね」と、勝手に雅巳と恋人になった気でいる。
雅巳は頭痛を覚えたが、絵里奈を簡単に切り捨てるのも惜しい気がして、恋人とはいかずとも彼女と曖昧な関係でいることを受け入れた。
ほんの少しだけ、美鳥に罪悪感を覚えた。