我が身可愛い大人たち
『ねえ、私、可愛い?』
初めて会った男にさんざん奉仕した後、絵里奈は期待を込めて上目遣いで尋ねた。
男は指で挟んだ煙草を弄び、気だるげに紫煙を吐き出し言う。
『ん~、可愛いっつーより、えろい?』
『えー、やだそれ。可愛いの方がいい』
『いいじゃん、俺は好きだよそのお手軽さ。な、もう一回させて』
経験人数が増えるにつれ、それに反比例するように、絵里奈を大切に愛でてくれる男は減っていった。
絵里奈は焦れ、それでも僅かな望みをかけて男を誘惑し、脚を開いて、心と体を切り売りした。対価として得られるものは、ほとんどないというのに。
そんな絵里奈と雅巳が出会ったのは、今年の一月。会社帰りにフラフラと飲み歩いていた絵里奈が、ごみ置き場で酔い潰れた雅巳に声をかけ、気まぐれで家に連れ帰ったことから二人の関係は始まった。
雅巳のためにシャワーを貸している間、ひとつしかないベッドに絵里奈が入っていたら、雅巳が裸のまま部屋に戻ってくる。
そしてなにを勘違いしたのか、うわごとのように『梓沢』と言いながら、絵里奈の体を弄った。