我が身可愛い大人たち
絵里奈は驚いたが、男性の温もりに期待する習性は変わっていなかった。しかも、別の女性と勘違いされているとはいえ、雅巳は何度も『可愛い』と口にする。
絵里奈はそんなことで喜びを感じてしまうくらいに、心が擦り切れていた。
翌朝になると雅巳は昨夜の記憶がなく慌てていたが、絵里奈はすっかり彼のことが気に入っていた。
雅巳がしきりに口にしていた『梓沢』という女性について根掘り葉掘り尋ね、無邪気にこんな提案をする。
『梓沢さんって人妻なんだ。しかもレスって、チャンスじゃん。手伝ってあげようか、夫婦仲を壊すの』
『……手伝うって、どうするんだ』
雅巳としては卑怯な手はなるべく使いたくなかったが、絵里奈がなにをするつもりなのか興味はあった。彼に促された絵里奈は、得意げに続ける。
『梓沢さんって、まっすぐな女性なんでしょ? だったら、夫の浮気は許せないタイプに決まってる。私が旦那さん、奪っちゃえばいいんだよ』
『そんな簡単な話か?』
『まぁ見ててよ。それで、もしうまくいったらご褒美をちょうだい?』