我が身可愛い大人たち
「今日は、ダメだって……」
「嘘。もうおっきくしてるくせに」
挑発するように絵里奈が言うと、和真は手のひらで目元を覆い、観念したようだった。
絵里奈はゆっくりと和真のそこに舌を這わせ、無心で愛撫した。いつもより動きが緩慢なのは、決して和真を焦らしているわけではなく、時間を稼ぐつもりだった。
大切な誕生日の夜、レストランに現れない和真に打ちひしがれる彼の妻を、雅巳に慰めさせるために。
絵里奈のミッションは成功だった。
和真は快楽に耐えながら美鳥に食事の約束をキャンセルするメッセージを打ち、絵里奈に何十分も弄ばれた後、あっけなく彼女の口の中で果てた。
しかし心なしか、絵里奈を見下ろすその目は冷たい。
「絵里奈ちゃん、こういうのはもうやめてくれ」
「……ごめんなさい」
意外な反応だった。絵里奈はてっきり、このまま本番に突入するのだとばかり思っていた。
和真は焦った様子で服を元に戻し、腕時計に目を走らせる。