イマさら
「あの日はごめんな」



図書館で借りる本を探していると竜季(りゅうき)が私に謝った。



「あの日?」

「覚えてないか?
図書館に閉じ込められた日」



覚えてるよ。私が中1の時だった。

図書館の先生がまだ中に居たのに鍵を閉めてしまい、閉じ込められたのだ。



「その事で何で竜季が謝るの?」

「泣かせたじゃん。
真穂(まほ)は自分一人だと思ってたのにさ。突然俺が現れて驚いたんだろ? それなのにあたふただけして真穂に謝らなかった。
今更だけど、ごめ…」

「竜季は謝る事なんてしてないよ」

「してるだろ。俺が驚かせたせいで…」

「驚かされたせいじゃない」



私が泣いたのは…。



「嬉しくて…泣いたの」

「うれ……しくて?」

「嬉しいじゃん!
閉じ込められて、一人で、頭真っ白になって。
動けなくなった時に現れて」



一人が好きで、一人で居る方が楽だと思っていた私は竜季を煩わしく思っていたのに居てくれた。



「今更だけど…」



あの日言いたかったけど照れくさくて言えなかった言葉。

5年かかったけど、伝えるね。



「あの日居てくれてありがとう」
< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

神頼み

総文字数/414

青春・友情1ページ

表紙を見る
表紙を見る
おとしモノ

総文字数/989

恋愛(ラブコメ)3ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop